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 2020秋田県高校野球大会が9日、開幕する。選手権大会が中止となり、一時は全県規模の大会の開催も危ぶまれた。そんな異例の状況の中で選手を支え、喜怒哀楽を共にしてきた3年生のマネジャーにとっても、「最後の夏」が始まる。

 大館鳳鳴(ほうめい)のマネジャーの成田理子さん(3年)は「鳳鳴野球部一家」に育った。父と兄は元選手、姉も元マネジャー。幼い頃から休日はいつも、家族で兄の練習試合の応援に行った。「小さいときから野球しか見てこなかったから、ほかのスポーツには魅力を感じない」という、筋金入りの野球好きだ。

 マネジャーを志すようになったのは、小学2年のとき。鳳鳴が21世紀枠で選抜大会に出場した年だ。1年生だった兄はベンチ入りを逃したものの、成田さん一家も甲子園球場まで応援に行った。戦っているのは、普段兄と一緒に練習している選手たち。「甲子園ってテレビの中だけの世界じゃないんだ」。高校生になったら鳳鳴の選手と一緒に甲子園に行きたい、と思った。

 念願がかない鳳鳴に入学し、マネジャーになった。授業が終わると、選手より早くグラウンドに着けるよう、誰よりも早く教室を出た。選手たちが飲む麦茶を10リットル近く用意したり、前日の試合のスコアを集計したり、勝利祈願のお守りを作ったり。どの仕事も選手と一緒に甲子園に行くためだと思うと、やりがいを感じた。

 選手権大会の中止は衝撃だった。発表の翌朝にあった3年生のミーティングでは、誰よりも泣いた。選手たちが「県大会の開催を信じて気持ちを切り替えよう」と話し合う中、ショックから立ち直れなかった。しばらくは家にいても、ぼーっとしたり泣いたりを繰り返す日々が続いた。

 いまも喪失感が完全にぬぐえたわけではないが、これまで以上に声を出して練習する選手の姿を見ているうち、「落ち込んでばかりじゃいられない」と思えるようになった。安打の記録が増えてきた練習試合のスコアを見ると、チームのレベルアップを実感してうれしくなる。

 鳳鳴は9日、大館桂桜との初戦を迎える。「甲子園はなくなってしまったけど、県大会で優勝できれば甲子園に行ったのと同じくらいの価値があると思う。優勝してほしいです」(高橋杏璃)