連合チーム、相手は100km先… 夏に願った単独出場

宮城奈々
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 2020年夏季鳥取県高校野球大会(県高校野球連盟主催、朝日新聞社など後援)が11日に開幕する。鳥取湖陵(鳥取市)は、昨夏の全国高校野球選手権鳥取大会以来となる念願の単独チームで試合に臨む。

 「いいよー!」「しっかり!」。学校から少し離れた、住宅街の真ん中にある鳥取湖陵の野球部グラウンド。主将の谷尾大和(3年)を中心に、部員たちが声を掛け合いながら白球を追いかけていた。12人の選手のうち、8人が1年生のフレッシュなチームだ。

 チームは昨夏、5人の3年生が引退すると、選手が5人だけになった。練習試合はできなくなり、普段のメニューもできることが限られた。練習は個人のスキルアップに重点を置き、少人数でも可能なノックなどを繰り返した。

 昨年の秋季大会には約100キロ離れた境港総合(境港市)と連合チームを組んで出場。県の端と端を週末に行き来し、わずかな時間で関係を築いた。毎回の移動は往復3時間を超えたが、捕手の有田崇竜(しりゅう)(同)は「人数が多いとこんなにできることが違うんだな」と野球の楽しさを実感した。1回戦で倉吉総合産(倉吉市)と戦い、2―8で敗れたものの、「コールドにならず最後まで戦えた」(三好勇希部長)と手応えもあった。

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 最後の夏は連合チームか、単独出場か――。春までに1人が部を去り、選手は4人になっていた。有田は中学の後輩などから3人の新入生が部に加わると聞いていた。それでも、単独チームを組むには人数が足りない。夏のイメージはわかないままだった。加えて、新型コロナウイルス感染拡大の影響で学校は休校になった。再開後も活動には制限があり、新入生の勧誘は満足にできなかった。

 迎えた新学期。部員たちの不安をかき消すように、投手の会見(あいみ)慎之輔(同)の弟ら8人の選手と2人のマネジャーが部にやってきた。有田は「まさか8人も入ってくれるなんて」。会見は「テンションが上がりました」。昨夏以来の単独出場。3人の3年生の喜びは大きかった。

 入部した1年生のうち、2人には中学野球の経験がない。西尾敦監督(45)は「どうしたら1年生が練習しやすいかなど、一人一人がチーム内での自分の役割を考えるようになった」と部員の変化を実感する。できる練習の幅も広がり、グラウンドには活気が戻ってきた。

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 部員たちは今、「凡事徹底」をテーマに、基礎練習を中心に汗を流す。初戦は11日、相手は鳥取西に決まった。主将の谷尾は「若いチームだけど、最後まであきらめずにプレーしたい」。喜びと感謝を胸に、開幕試合に臨む。(宮城奈々)

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