拡大する写真・図版動物やお祭り、人々の穏やかな日常を撮るのも好き。「あてもなく道端で何かを待つのも楽しみのひとつ」=ケニア・ナイロビのキベラスラム、ゴードウィン・オディアンボ撮影

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 AFP通信ナイロビ支局チーフフォトグラファーの千葉康由さん(49)は、アフリカを主な舞台として活躍を続けています。撮影した一枚が今年4月、「世界報道写真コンテスト」で最高の栄誉に輝きました。千葉さんの写真はなぜ、人々の心を打つのでしょう。オンラインによる取材で話を聞きました。

記事の後半では、千葉さんのインタビューがお読みいただけます。

 昨年6月、スーダンの首都ハルツーム郊外。長期独裁政権がクーデターで倒れ、軍が実権を握る。文民統制を求める人々が、電気もインターネットも遮断された厳戒態勢下で開いた集会。少年が突然、群衆の中央に躍り出て詩の朗読を始めた。「矢がビュンビュンと飛ぶような」気迫ある声と真剣な表情。無数の携帯電話が少年を照らし、手拍子と合いの手の「革命」が響く。

 「若者が自分の手で未来をつくろうとしている。彼らの情熱は消えていない」。夢中でシャッターを切った一枚が今春、権威ある「世界報道写真コンテスト」で大賞に選ばれた。日本人の大賞は、ベトナム戦争の報道で知られる沢田教一らに続く41年ぶりの快挙だ。審査員は授賞式で「若者が投石や銃でなく、詩で権力に立ち向かう。希望を感じた」と評した。

 「運がいい」と謙遜するが、妻暁子さん(44)は「一貫しているのは、過酷な状況に置かれた人々の前向きな面を撮ろうとする姿勢。現場を執念で探したはず」という。この場面も、何日間も車で夜に走り回った末、出会った。

人々の姿を記録する

 美大で写真を学び、朝日新聞に入社前の1995年、ボランティアで阪神大震災の被災地に入った。マスコミを追い払っていた男性が、震災の写真集を真っ先に買い、見入っていた。「記録することの大切さを知った。悲しくつらい現場でためらい、くじけそうになる時、いつもあの姿を思い出す」

 朝日新聞を2007年に退職後、フリーとしてケニアへ。半年後の大統領選。スラム街であった野党候補の演説で、住民が現職の巨大ポスターを破り始めた。周りのカメラマンに聞くと世界3大通信社の一つのAFPだけがいない。撮った写真をすぐに売り込みに行った。縁が重なり、11年、正式スタッフに。

 新しい現場では「何かしらの課題を自分に課す」。東日本大震災の時は「残された人々の思いを集める」と心に決め、被災者と話し、写真説明に名前を入れた。行方不明の家族を捜す男性、娘の卒業証書を見つけた母、家族を奪われた海岸に立つ父子。一連の写真でも同コンテストで入賞した。

 ついに最高位に上り詰めても、気負わない。いつか日本に戻り、自分の国を世界に発信したい。「自分にしか撮れないものがある」と信じて。(吉田美智子)

朝日新聞社は7月16日、千葉さんらコンテストの受賞者が語るフォーラムをオンラインで開きます。申し込みなど詳細は、http://t.asahi.com/wgsn。千葉さんのほか、スポットニュースの部で入賞したEPA通信の黒川大助さんもお迎えする予定です。

拡大する写真・図版世界報道写真コンテストで大賞を受賞した「まっすぐな声」=Yasuyoshi Chiba/AFP

「縛られるのが嫌い」 朝日新聞時代の千葉さん

 千葉さんの元上司で朝日新聞東京本社フォトアーカイブ編集部長の吉田耕一郎は、朝日時代の千葉さんを振り返り、「新聞社の枠に収まりきらなかった」と語る。

     ◇     ◇

 千葉くんが新潟駐在時代、富山県のホタルイカ漁の写真を撮影に行き、デスクのこちらがOKを出しているのに、1週間、早朝に船に乗って撮り直しに通った。「もういいから写真を出せ」と言っているのに、「もう少し撮ってみたい」と言っていて、それ以上せかすのをやめた記憶がある。歴代何人ものカメラマンが同じように撮影していた風物写真だったが、自分なりの色を出したかったんだと思う。ホタルイカの青く発光する色の見え方にこだわり、どうすればその色が出るかを何度も試行錯誤していた。定番という言葉が嫌いで、自分ならではの写真にこだわる千葉くんらしい部分だと思う。

拡大する写真・図版朝日新聞時代の千葉康由さんが撮影した一枚。青白い光はホタルイカが放つ光跡(4秒間露光)=2001年4月7日、富山県滑川市沖の富山湾

 東京版で「中央線の詩」という連載を任されていた時は、自分でふらふら取材に行って、おもしろい写真を撮ってきた。動物が大好きで、デモ隊の取材に行ったときに、突然、猫のアップ写真を送ってきたりする変わったところもあった。

 縛られるのが嫌いで、自由に放し飼いにしておくと、いい写真を撮ってくる。被写体にひかれ、いったん集中すると、とてつもない力を発揮する。そんなカメラマンだった。新聞社の枠に収まりきらなかったんじゃないかな。

千葉さんインタビューの一問一答

 ここからは、千葉さんのインタビューの一問一答です。フォトグラファーとしての原点と修業時代、そして今を語ります。

 ――世界報道写真コンテストの大賞受賞の感想を聞かせてください。

 今年の授賞式は新型コロナウイ…

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