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 コロナ禍で、映画や演劇、音楽など文化芸術の担い手が活動存続の危機にたたされている。東京都内在住の映画監督・深田晃司さん(40)は、苦境にある全国のミニシアターを支援する「ミニシアター・エイド基金」を立ち上げた。「文化の多様性は、守ろうと思わなければ守れない」と訴える。

 ――基金の呼びかけ文で、映画の多様性が守られるべき理由として「民主主義を守ることにつながる」と記しました。

 民主主義で選ばれたリーダーには、少数派の意見にも耳を傾ける責任がある。映画などの文化芸術は、「私には今の社会はこう見えている」という個々の感情や価値観のフィードバックです。多様な価値観を示すことで、民主主義を支えています。

 基金では3億3千万円を超える寄付が集まり、映画関係者の励みになった。ただ、映画館の営業は再開されても、すぐにはお客さんは戻っていない。これからが正念場です。

 ――都は動画作品をつくったプロのアーティストらに、1人あたり10万円支給する独自の支援策を打ち出しました。

 あっても良いですが、理念としては根本に疑問があります。コロナ禍における助成金は、いわば災害時の避難所。「避難所に入る前に一芸披露しろ」と入り口で選別しているようなものです。文化庁の支援策にも重なりますが、生存のための支援という意識が薄い。

 そもそも日本の国家予算における文化予算が足りない。韓国の9分の1、フランスの8分の1。今まで文化の担い手が声をあげてこなかったことが一因です。

 ――公的な支援を受けると表現の自由が守れないと考える映画人もいます。

 だからこそ、税金から支援を受けても、国に口を出させない仕組み作りが重要です。「金をもらわない」という気概はかっこいいですが、それでは、金持ちだけが文化芸術に携われる社会になります。

 ――誰もが文化芸術に触れられる環境作りも大事です。

 今の日本では、芸術鑑賞はぜいたく品で、生活が苦しい人が足切りされている。私は高校生の頃、小金井市の福祉会館であった16ミリ映画の上映会に通いました。字幕が白い文字で、明るい場面では読めなくなりましたが、そこでみた数々の名作が自分の映画体験の原点になっています。

 でも地方だとそれさえ難しかったでしょう。東京で生まれ育っただけで、文化的に優遇されていた。地方との格差を考えたとき、せめて文化庁が助成した映画は、日本のどこでもみられるようにしてほしいです。

 ――共同代表をつとめるNPO法人「独立映画鍋」では、都立高校で映像を使いメディアリテラシーの授業をしています。

 あらゆる映像には作り手の意図があることを教えています。誰もが撮影できる時代だからこそ、「映像の読解力」を高める教育が大事だと考えています。(構成・伊藤恵里奈)

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 小金井市出身。監督作に「歓待」「淵に立つ」「よこがお」など。代表をつとめるNPO法人「独立映画鍋」で映画業界の労働問題などを問題提起をしてきた。深夜ドラマの劇場版「本気のしるし」が、今年のカンヌ国際映画祭オフィシャルセレクションに選出された。