[PR]

 ふだんはほとんど海外のマンガを読まないのですが、最近魅力的な3作に出会いました。フランスから自伝的な2作、カフカの「審判」をテーマにした博士論文に悪戦苦闘する女性が不条理にまみれる「博論日記」と、フランス生まれの男の子がリビアやシリアで波乱と混沌(こんとん)の幼少期を過ごす「未来のアラブ人」。米国からは、新聞向けに配信されてきた長寿マンガの主人公が「スマホ中毒」にアップデートされたという「ナンシー いいね!が欲しくてたまらない私たちの日々」です。

 花伝社から4月に出たティファンヌ・リビエール作/中條千晴訳「博論日記」がイチオシ。ぬかるみに足を取られつつ果てなき迷宮を進むがごとき文系院生の日常をシニカルに描きます。先行して刊行された各国で若手研究者らの熱い共感を得たそうで、花伝社の編集者・山口侑紀さんに聞くと「オーバードクターの方々から『切実すぎて読んでいてツラいが面白かった』といった反響をいただいています」とのこと。日本でも「院生あるある」なわけですね。

拡大する写真・図版ティファンヌ・リビエール作/中條千晴訳「博論日記」(花伝社、税込み1980円)

 立ちはだかる門番のように様々な「敵」が、主人公ジャンヌの行く手を阻みます。のらくらと仕事を遅らせ、院生たちが疲れ果てるのを待つ大学事務員。院生らが書いて送ってくる「厄介な紙くず」(論文)にウンザリしてるくせに気を持たせるようなことを言ってごまかす指導教官。妙な条件をつけてだまし討ちのように結局お金をくれない非常勤講師の制度。「いつまで博士論文をやってるの?」と会うたびに質問攻めを食らわす家族や親戚。精神面、生活面で優しくサポートしてくれる彼氏もカフカ中毒の愚痴製造器と化した主人公にやがて――。そして最大の敵は、壁の本棚いっぱいの先行研究を下敷きにして絶え間ない推敲(すいこう)を重ねた結果フクザツ怪奇な魔の城と化した自分の論文。カフカさながらの不条理に立ち尽くし、若さも希望も吸い取られ、ハッと気づけば4年、5年……。

 筆致は自在。特に表情がいいで…

この記事は会員記事会員記事です。無料会員になると月5本までお読みいただけます。

こちらは無料会員が読める会員記事会員記事です。月5本までお読みいただけます。

こちらは無料会員が読める会員記事会員記事です。月5本までお読みいただけます。

この記事は会員記事会員記事です。

980円で月300本まで2種類有料会員記事会員記事の会員記事を読めるシンプルコースのお申し込みはこちら