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 龍谷大平安(京都)の4番打者・奥村真大(まさひろ)(3年)の胸に刺さった一言がある。

 「金属で打ってくれ」

 6月21日、今年初めての練習試合。昨秋の明治神宮大会を制した中京大中京(愛知)を相手に、金属製より芯が狭く、打球が飛びにくい木製バットで挑もうとして、エースの西本晴人(3年)から頼まれた。原田英彦監督が甲子園への道を断たれた3年生のために強豪と組んだ試合だった。

 それでも、バットは変えなかった。「甲子園があったなら金属でしたけど、プロに向けたアピールをすると決めていた。半端な気持ちではダメだと思って」と奥村。中京大中京の好右腕・高橋宏斗(3年)らの前に、結果は5打数無安打3三振だった。

 兄はプロ野球ヤクルトの奥村展征(のぶゆき)。「兄を超えたい」と京都の名門に進み、1年夏から甲子園の土を踏んだ。大学を経てプロに挑戦しようと考えていたが、新型コロナウイルスの影響による休校期間に家族と話し合ううちに、プロへの憧れが抑えられなくなった。

 兄の「挑戦できるタイミングは逃すべきではない」という言葉にも背中を押され、5月、家庭訪問に来た原田監督に思いを伝えた。その後、全国選手権大会が中止に。金属製バットを握ることはやめた。監督は「プロ挑戦も木製バットも奥村が決めたこと。責任を持たないと」と厳しい視線で見守ってきた。

 7月に入り、長打が出るようになった。仲間も理解し、練習を手伝ってくれる。京都の独自大会の開幕は11日。「進路を変えて、仲間や監督、たくさんの方に迷惑をかけた。『奥村が金属で打っていれば』とは絶対言われないようにしたい」。納得してもらえる打撃を見せるつもりだ。

 コロナの影響は球児の進路にも及ぶ。特にプロ野球を目指す球児にとっては、難しい夏になる。春の公式戦の中止や練習試合の減少で、スカウトに見てもらえる機会が減ったからだ。

 セ・リーグ球団のあるスカウトは「高校生は一冬越えると大きく伸びる。例年は3、4月の試合や選抜大会で伸び幅を確認していたが、今年はまったくできなかった。今、ようやくそれをしている段階」とこぼす。その分、各地の独自大会は貴重な場になる。

 作新学院(栃木)の捕手・横山陽樹(3年)は、卒業後も高いレベルで野球を続けたいと考えている。夏の甲子園には1年生のときから連続出場。昨年は2年生ながら高校日本代表に選ばれ、U18(18歳以下)ワールドカップの米国戦で本塁打も放った。

 栃木の独自大会は当初、各校1試合のみの方式だった。後にトーナメント制に変更されたが、7イニング制での実施に。例年より少ない機会で確実にアピールしなければならない。プロか、進学か。横山は言った。「現に悩んでいます。プロの評価をもらうには、結果を残さないといけないし。いろんな方と相談しながら決めたい」(小俣勇貴、山下弘展)

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 〈プロ志望者のための合同練習会〉 高校3年生の進路確保のため、日本高校野球連盟と日本野球機構(NPB)が特別措置として、8月下旬から9月中旬までの週末に実施する。東日本、西日本に分けて開催する予定。参加希望者は、8月1日から受け付けが始まるプロ志望届を同21日までに提出し、練習会への参加申し込みを別途提出する。