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 福岡県久留米市で度重なる浸水被害が起きている。「内水氾濫(はんらん)」と呼ばれる現象で、今夏だけで2度。毎夏のように起きる被害に、住民は疲れ切っている。

 「高いじゅうたんなのに」。9日午後、久留米市城島町でカラオケ店を営む中園博さん(75)は水を吸ったじゅうたんを足で踏みながら嘆いた。今回の豪雨で、店は7日昼に床上15センチほど浸水。引き始めたのは翌日夕方になってからだった。数百万円した電気自動車も水につかったという。

 近くを流れるのは1級河川・筑後川の支流、山ノ井川。今回だけでなく、2018年7月の西日本豪雨でも水があふれ、店が浸水したという。中園さんは「大雨のたびに山ノ井川が氾濫する。もううんざり」。

 久留米市内では8日までの大雨で、山ノ井川など筑後川支流の5河川で水が堤防を越えて市街地などに流れ込んだ。県によると、9日午後6時現在で床上、床下浸水は計1910棟に及んだ。先月27日にも1時間に92・5ミリの観測史上最多の雨が降り、市内が浸水。昨年8月に佐賀県に大きな被害を出した大雨でも大規模な浸水が起きた。

 こうした被害をもたらしているのが「内水氾濫」と呼ばれる現象。熊本南部の豪雨で起きた球磨川の堤防決壊といった大きな河川からの「外水氾濫」と異なり、住宅地などに降った雨水を支流や水路を通して大きな河川に送れないことで水位が上がり、浸水被害が出る。

排水追いつかず

 気象庁は6日夕、福岡県大牟田市など筑後地方に大雨特別警報を出した。筑後川を管理する国土交通省筑後川河川事務所によると、6~8日は大分・熊本県境など筑後川上流でも大雨が降り、久留米市周辺の下流部でも水位が上昇。筑後川の水位が高くて支流は自然に流れ込めなかったのに加え、筑後川からの逆流を防ぐために合流点の水門を閉じた。

 合流点にたまった水はポンプで筑後川に出していたが、支流上流や市街地に降った雨も多くて排水が追いつかず、支流から水があふれる内水氾濫につながった。7日は大潮の満潮にも重なり、水門閉鎖が長引いて市街地の水が引くのに時間がかかった。国から水門やポンプの操作を委託されている久留米市の担当者によると、3日間かけて水門を短時間に何度も閉めたという。

進む護岸のかさ上げ工事

 毎年続く浸水被害に打つ手はないのか。今回、氾濫した山ノ井川の周辺などの2地域では、支流を管理する福岡県が護岸のかさ上げなどの工事を進めている。

 国と県、市は今年度、筑後川支流で周辺人口の多い市街地の浸水対策の総合内水対策計画を公表。貯留施設や放水路の新設、ポンプの増設、ハザードマップの作成などに加え、浸水が頻発する地域での住宅の新規立地抑制を見据えた検討を始めた。市は13日、100リットル以上の雨水貯留タンクを設置すれば最大3万円を補助する事業を始める。

 九州大の小松利光名誉教授(河川工学)は「久留米市は市街地の東に山があって雨が降りやすいなど内水氾濫が起きやすい条件が重なっている」と指摘。「気候変動の影響で、大雨による浸水もさらに増えるだろう。ハード対策にも限界があり、地域で事前に避難場所を決めて早めの避難を心がけてほしい」と話す。