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 2020年は、いつもと違った夏になった。第102回全国高校野球選手権大会と地方大会が中止。各都道府県高野連が独自の大会を実施するが、形態は様々だ。地方大会同様、トーナメント制で王者を決めるところがあれば、8強で打ち切ったり、試合のイニングを短縮したりするところもある。

 特殊な夏の特殊な大会にどう挑むか。各校は腐心する。7イニング制の大会がある静岡の知徳は、3年生中心で戦う。ベンチ入りは25人。18人いる3年生全員が背番号をつけ、残りは下級生を試合ごとに入れ替える。「私が決めました。3年生にやりきってほしい」。初鹿文彦監督は、もう甲子園を目指せない最上級生に寄り添う。

 副主将の剱持陽喜(3年)は外野の定位置を2年生と競っていた。「実力的にスタメンで出られる2年生がいる。頑張らないといけない」。練習をサポートしてくれる下級生への感謝を胸に、独自大会へ臨む。

 一方、通常の夏と同じく、下級生を含めたチーム編成を選んだところもある。強豪ひしめく大阪で、春の選抜大会に2回、夏の全国選手権大会に1回出場経験のある金光大阪は3年生約30人と、下級生を競い合わせて最終的なベンチ入りメンバーを決める。

 理由がある。主力投手はいずれも2年生で右の伊藤大貴と左の平野信太朗。この2人がそのまま打線も中軸だ。昨夏、先発メンバーに名を連ねた主将の竹島佑毅(3年)は「2年生がおらんと勝てへん。悔しいけど現実です」。

 どうしても大阪桐蔭と履正社に勝ちたい。チームは昨夏、大阪大会準々決勝で大阪桐蔭に延長十四回の末に勝利したが、決勝で履正社に敗れた。昨秋の府大会準決勝では履正社に五回コールド負けした。2009年春以来、甲子園から遠ざかる。

 入学してくる多くの選手たちが地元出身で、中学時代は目立たなかった。スター選手はいなくても、目の前の1点にこだわり、1点を渡さない野球で激戦区を戦ってきた。竹島は「大阪桐蔭と履正社を倒して『甲子園があったら、行くのは俺たちやったんやぞ』と証明したい」と意気込む。

 昨夏、山形大会の決勝で敗れた山形中央の庄司秀幸監督も、通常のチーム編成にこだわった。真剣な競争、真剣な勝負を経験しないと、人への思いやりや、感謝の心が生まれにくいのではないかと考えたからだ。3日、放課後に実施した仙台育英との練習試合には1年生も連れて行った。

 自分の学校のみならず、全国の3年生が過酷な状況に置かれたと思っている。だからこそ、強く願う。「常に『命』を意識した年に3年生になり、最後の大会を迎えた。一人でも多く、将来は指導者になってほしい。彼らにしか伝えられないことがある」(小俣勇貴、河野光汰、山下弘展)

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 〈独自大会〉 各都道府県高野連の主催で、全国選手権大会の地方大会と同じく49大会(南・北北海道と、東・西東京)が実施、予定されている。休校が長引いて練習量が不足しているため7イニング制や、学業への影響を考慮して決勝まで行わない大会もある。熊本は豪雨被害のため全県規模での大会を見送り、県内を3地区に分けて開催する。1試合ごとにベンチ入りメンバーの変更を認めている大会が多い。