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 「お互いがお互いの目、耳になろうや。当たり前のことちゃうんか」

 6月20日、金光大阪のグラウンド(大阪府高槻市)には、横井一裕監督(45)のカミナリが落ちていた。紅白戦で、声かけの少なさから内外野の連係プレーや走塁などでミスが頻発した。

 仕方のないことなのかもしれない。新型コロナウイルスの影響で夏の選手権大会が中止となり、チームは揺れた。休校が明け、約3カ月ぶりに3年生部員が集まった5月下旬の登校日には、モチベーションをなくした部員が髪を伸ばして現れ、退部したいと言ったこともあった。

 だが、最終的には約30人の3年生全員が残った。18日に開幕する府の独自大会で優勝することを目標に再始動したばかりだった。

 横井監督は「『何で中止なんや!』と叫ぶのが普通。無理に納得しろとは思いません」と選手の心情をおもんぱかる。だが、優勝を目標に決めた以上、問いたかったのは野球に取り組む姿勢だ。この日の紅白戦では緊張感のなさが目立った。「心折れたら、人間終わりやで」。厳しい言葉で指導した。

 各都道府県の独自大会では、3年生のみで戦う意向を表すチームが多い。だが、金光大阪は下級生を含めたメンバーを編成する。

 理由がある。主戦投手はともに2年生で、右の伊藤大貴と左の平野信太朗。2人が打線の中軸も担う。主将の竹島佑毅(3年)は「2年生がおらんと、勝てない。悔しいけど現実です」。

 チームは昨夏、準々決勝で大阪桐蔭を延長十四回の末に倒したが、決勝で履正社に敗れた。昨秋の府大会準決勝では履正社に五回コールド負け。2009年春の選抜以来、甲子園から遠ざかる。自身もOBの横井監督は「大阪に生まれて、大阪代表として甲子園を狙う以上、大阪桐蔭、履正社に勝つことは宿命」と話す。

 打倒2強を夢見て入学してくる選手の多くが、地元出身の無名選手。それでも、07年には中田翔(日本ハム)擁する大阪桐蔭を破り、夏の甲子園に出場した。スター選手がいなくても、目の前の1点にこだわり、1点を渡さない、しぶとい野球で激戦区を戦ってきた。竹島は「大阪桐蔭と履正社を倒して、『甲子園があったら、行くのは俺たちやったんやぞ』と証明したい」と意気込む。

 「今年の3年生はかわいそう」。世間の目は温かい。だが、横井監督はあえて選手に強い言葉を投げかけた。「18の男が、いつまでも同情されてうれしいか?」と。「やるからには、負けるわけにいかへんぞ」(河野光汰)