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 北海道高野連主催の夏季北海道高校野球大会の地区大会は11日、函館地区を皮切りに始まる。離島の奥尻町にある奥尻高校は、新型コロナウイルスの感染から島を守りたいと出場を断念した。「参加校の選手たちには、思い切り野球を楽しんでほしい」。島からエールを送っている。

 「独自大会が開かれたとしても、出場は難しいだろうな」。奥尻野球部(選手8人、マネジャー3人)の主将、横山海斗君(18)は、甲子園大会の中止が発表されたときから、そう感じていた。

 奥尻島は医療体制が十分ではなく、小さな国保病院があるだけ。高齢者も多い。離島ゆえに出場には移動や宿泊を伴い、島内にウイルスを持ち込むリスクが高まる。5月の学校再開前には、島外から入学している「島留学生」らが、万が一のため函館のホテルで2週間の健康観察をしてから島に入ったほどだった。

 横山君と成田青空(そら)君(18)、マネジャーの川田蓮さん(17)の3年生は話し合いを重ね、出場辞退を決めた。最後の夏を全うしたいとの葛藤もあったが、島を守りたい思いのほうがまさったという。

 「先輩には試合で引退してほしい。僕らも全力で試合を盛り上げる」と意気込んでいた2年生は、まさかの決断に驚いた。それでも最後は、「そこまで島のことを思っているんだ」と賛同した。

 川田さんはこの夏、公式戦で初めてベンチに入るはずだった。これまでは連合チームを組んだ他校のマネジャーに、ベンチ入りを譲ってきたためだ。「残念だけど、寄宿などでお世話になっている島の人たちに、迷惑はかけられないから」

 横山君は、1年の時に見た奥尻高の「一人女子バレー部員」の姿を思い出していた。その先輩はたった一人でボールを打ち、サーブやスパイクの練習を続けた。試合はかなわなかったが、大好きなバレーを研究して論文にまとめ、生徒や先生にプレゼンをして「最後の試合」を飾ったのだ。

 「引退の形はいろいろあっていい。僕たちなりに前向きな決断ができてよかった」と横山君。大会に出場する選手に向けて、「積み重ねたものをすべて出し切って、野球ができる幸せを感じながら楽しんでほしい」と応援を込めて話した。(阿部浩明)