北朝鮮による拉致被害者で2002年に帰国した地村保志(やすし)さん(65)の父、地村保(ちむら・たもつ)さん=福井県小浜市=が10日亡くなった。関係者への取材でわかった。93歳だった。

 息子の保志さんは婚約者の富貴恵さん(65)とともに1978年7月、小浜市内で行方不明になり、後に北朝鮮による拉致の疑いが強まった。保さんは97年に被害者の家族会ができると、署名活動や講演会活動で全国をめぐり、拉致問題の解決を呼びかけた。

 2002年の日朝首脳会談で金正日(キムジョンイル)総書記(当時)が拉致を認め、同10月に保志さん、富貴恵さん夫妻ら拉致被害者5人の帰国が24年ぶりに実現。だが、妻の登志子さんは同年4月に74歳で亡くなり、息子との再会はかなわなかった。

 保さんは12年の朝日新聞の取材に「横田めぐみさんや有本恵子さん、増元るみ子さんら、いまだに帰国を果たせない被害者も多い。一日も早く帰国できるよう、政府はもっと強力に北朝鮮と交渉してほしい」と話していた。

「父のお陰で帰国果たせた」 保志さん、富貴恵さん夫妻

 北朝鮮による拉致被害者の地村保志さん、富貴恵さん夫妻は11日、保志さんの父、地村保さん(93)が10日に亡くなったことを受け、福井県小浜市を通じ、連名でコメントを出した。全文は次の通り。

 7月10日午前2時39分、父、保は93歳で永眠いたしました。

 父は生前、私たち拉致被害者の救出に向け、全力で闘ってくれました。そのお陰で、私たちは平成14年(2002年)10月に無事、祖国日本へ帰国を果たすことができました。

 父の救出活動がなければ、私たちの帰国もかなわなかったと思います。あらためて、父には心から感謝したいと思っています。

 横田めぐみさんの父横田滋さんに続き、父も亡くなりました。拉致被害者・家族は高齢化し、解決には一刻の猶予もありません。

 父は生前、すべての拉致被害者が帰国できることを心より望んでいました。父の遺志を引き継ぎ、我々の世代で拉致問題が解決されるよう今後も取り組んでいきたいと思います。