看板に焼き付けたコロナ禍の東京 Chim↑Pom

有料記事

編集委員・大西若人 千葉恵理子
[PR]

 東京・渋谷駅岡本太郎の壁画に場面を「付け足し」たり、事故直後の福島第一原発近くに乗り込んだり。「現実」にどんどん関わっていくスタイルで知られる6人組の美術家集団「Chim↑Pom(チンポム)」が今、新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言の東京を、ビルボード型のアートに定着させ、発表している。これまでも「都市」を舞台にプロジェクトを展開してきた彼ららしい作品だ。リーダー的存在の卯城(うしろ)竜太(42)は、「コロナウイルス自体もですが、人々の暮らしに介入してくる緊急事態宣言という初めての事態に関心があった」と話す。

 東京・東品川のギャラリーANOMALY。倉庫を改修した薄暗い空間に立ち並ぶのは、8枚の看板(ビルボード)だ。青地に白い文字で「TOKYO 2020」と記されたものが多く、「新しい生活様式」という看板もある。緊急事態宣言中の東京の街に、建築図面などに使われてきた青写真の感光液を塗った看板を掲げて放置し、変色させた。紙で覆った部分が白い文字に。作品は、「May,2020,Tokyo」と題した。

 岡本太郎の壁画だけでなく、渋谷の街で捕まえたネズミを作品のテーマにしたり、新宿の解体直前のビル全体を作品化したりと、Chim↑Pomは、これまでも都市や建築を扱ってきた。

 「僕たちは別に『都市マニア』ではないんですが、都市にいるネズミやカラス、下水道といった、みんなが見ないようにしているもの、でも絶対に消えないものを取り上げてきた。街を一つの公共圏と考えたとき、そういうものが見えないようにうまくデザインされているが、それらが忌み嫌われるには理由と歴史があることに気付いた」

 そんなChim↑Pomにとって、「緊急事態宣言の瞬間の街って、帰還困難区域と同じように、特殊なものに思えたんですよ」。そこで目を向けたのが、「青写真」。建築や都市と相性がよく、「将来図」の意味も託されている。

 「街ってコミュニケーション…

この記事は有料記事です。残り2602文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
今すぐ登録(1カ月間無料)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません