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 病により28歳で世を去った詩人、ブッシュ孝子の全詩集が今春、刊行された。死の直後に出された唯一の詩集から半世紀近くを経て、未発表の作品も収められる。彼女が病床でつづった言葉は、先の見えない不安を抱える私たちの心に、いま再び語りかけてくる。

 服部(旧姓)孝子はお茶の水女子大学大学院で児童心理学を学び、ドイツに渡った。その後、ウィーン大学で研究に励んでいた時、ヨハネス・ブッシュと出会う。3年間の留学生活を経て、1970年に帰国してからすぐ体の異変を訴え、乳がんの診断を受けた。手術を受けたのち、来日したヨハネスと結婚し、ブッシュ孝子となった。宮沢賢治やリルケなどを愛読し、かねて「童話を書いてみたい」と願っていた彼女は、73年9月から詩をつづり始めた。11月に病の再発で入院し、詩作を続けたものの、翌年1月、28歳で亡くなった。

拡大する写真・図版ブッシュ孝子(右)と夫のヨハネス・ブッシュ=服部和子さん提供

 詩を書いたのは人生最後の半年足らず。だがその間に、彼女は92編の詩を残していた。大学の恩師で詩人の故周郷(すごう)博が、うち80編をまとめ、同年、『白い木馬』と題して出版した。その詩は合唱曲になったり、雑誌で取り上げられたりもしたが、詩集は絶版となり、やがて日の目を見ない時間が続いた。

 彼女の詩に再び光をあてたのは…

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