空間に溶け、響き合う私 「内藤礼 うつしあう創造」

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田中ゑれ奈
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 見ることもまた、「創造」の一つのあり方なのだろう。金沢21世紀美術館で開催中の大規模個展「内藤礼 うつしあう創造」。天候や時間帯によって表情を変える空間に溶け込む作品を探し歩くうち、そんな実感が湧いてくる。

 昼間の光源は、半透明のガラスの屋根と通路越しの中庭から届くおぼろげな自然光だけ。高い天井から床すれすれまでつられた一本の糸、ごくまれに落ちてくる水滴がつくる小さな水たまり。左右の壁には、直径1センチの丸い鏡が向かいあわせに設置されている。目を凝らしてそれらの存在に気付いた瞬間、作品と作品、作品と鑑賞者、鑑賞者と作家の間で対話が始まる。

 「自我の表現を離れてものをつくること」を問い続けてきた内藤は今回、初めて「創造」という言葉を使ったという。タイトルの「うつし」は幾重もの意味を帯びる。例えば「写し」の字が当てられる。「まなびやまねび、再現することがまさに芸術であり、そうしないと生きて行けないのが人間なんだと認めたことで、受け入れられるようになった」と作家は話す。

 今展では、いくつかの要素が場所を「移し」ながら繰り返される。その一つが、冒頭の展示室で原初の風景の水場に見立てられた水滴の脇にたたずむ2体の人型。別の展示室では76体の人型が白い大きな地平を思わせる台に立ち、それぞれの方向を見つめている。中庭には彼らと同じ数だけ水をたたえたガラス瓶があり、雨の日には76の小さな水場のように波紋をつくる。

 「遷(うつ)し」であれば…

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