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 日本で承認されていない薬を海外から輸入し、治療や病気の予防などに使っている人たちがいる。インターネットで手軽に購入できる半面、健康被害に遭ったり、偽薬を購入してしまったりすることもある。どんな注意が必要なのか。

HIV感染防止の薬をインドから輸入

 東京都内の男性(39)は3年前から、エイズの原因となるHIV感染を防ぐための薬を毎日のんでいる。製造元はインドの製薬会社で、インターネット上のオンラインショップを利用して毎月輸入してきた。

 有効成分は抗HIV薬「ツルバダ」と同じ。ツルバダは、感染の危険が高い人が予防のためにのむ「曝露(ばくろ)前予防内服(PrEP(プレップ))」用として、欧米やアジアの多くの国で承認されている。日本ではHIV感染者の治療用として薬事承認され公的医療保険が適用されているが、感染予防用としては承認されていない。

 男性はLGBTと精神疾患や発達障害を抱える人たちが互いに支援し合うグループのスタッフで、同性愛者だ。海外のLGBT団体が発信する情報に日ごろから接し、PrEPのことは8年ほど前から知っていた。PrEPの普及とHIV感染者の減少に貢献した英国の男性同性愛者を紹介する英文の記事を読んだことが個人輸入を始めるきっかけだった。

 ロンドンを拠点に活動するPrEPの普及啓発団体が大学の協力を得て品質検査をし、偽薬が見つからなかったことを公表しているオンラインショップを利用。主に男性同性愛者の性感染症を対象とする国立国際医療研究センター(東京都新宿区)の研究外来(SH外来)で定期的に検査を受け、薬の副作用やPrEPでは防げない梅毒など他の性感染症のチェックを受けている。

 「品質検査もされていない薬の輸入にはリスクもあることを知らせたい」と考え、仲間とともに医師らの協力を得て、昨年夏、PrEPの利用方法や注意点をまとめた日本語の情報サイト(PrEP@TOKYO)を開設した。

 昨年、国内で新たにHIV感染者・エイズ患者と診断されたのは1219人。約70%が男性同性愛者だ。PrEPについては厚生労働省研究班が日本に導入できるか評価するための臨床試験を2年前からしている。研究代表者である同センターの水島大輔医師によると、昨年10月時点でセンターを受診していた男性同性愛者を調べたところ、PrEPでツルバダを使用する臨床試験の参加者約120人にHIV感染者はいなかったが、非使用者(415人)では1年間に約4%が新たにHIVに感染することがわかったという。

 PrEP導入で感染者が減れば、「抗HIV薬の費用だけで感染者1人当たり年間約250万円、生涯の治療費は約1億円と言われる」(水島医師)医療費の削減効果は大きい。だが、薬事承認されても、治療でなく予防であるPrEPには公的医療保険は適用されないとの見方が強い。

 ツルバダの薬価は1カ月分(30錠)約11万円。一方、男性が輸入するのは先発品の特許が切れた後につくられる後発品で、1カ月分の購入費は送料込みで約4千円で済む。障害者関係の団体職員で年収約300万円の男性は、ツルバダのPrEP用の価格が大幅に下がるか、日本で後発薬の販売が始まらない限り、輸入を続ける考えだ。

 厚労省研究班が2018年に男性同性愛者ら約6千人を対象に行ったインターネット調査によると、「PrEPの薬が日本でも入手可能になったら使いたいか」という質問に対し、「とても使いたい」「まあ使いたい」と回答したのは合わせて約69%。「PrEPに対し、1カ月最大いくらまでなら払いますか」という質問に対しては、54%が「5千円未満」と答えている。

 コロナウイルスの感染拡大でオンラインショップが一時受け付けを停止したため、男性は3月中旬~5月末の間、薬の購入ができなかった。「個人輸入にはこんなリスクもあるのかと思い知らされた。承認された薬を医師の処方に基づいて服用し、定期的に健康チェックも受けたい。収入が低い人も含め、希望者全員が国内でPrEPをできるような価格設定にしてほしい」と話す。

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