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(12日、石川独自大会 金沢西4-3野々市明倫)

 1点を追う九回裏、野々市明倫の打者2人が倒れた後、球場に代打を告げるアナウンスが流れた。

 呼ばれたのは控えの主将西嶋乃暉(ないき)(3年)。その直前の攻守が切り替わるタイミングで、監督の坂本宏樹(35)から代打に出すと告げられていた。

 準備はできていた。「後ろには良いバッターが続く。絶対に塁に出る」。強い決意で打席に向かった。

 昨秋の県大会後、主将の交代があり、急きょ坂本から指名された。一番まじめで、仲間のために厳しいことを言える西嶋が、ふさわしいとされたのだ。前主将と連携してチームをまとめていった。

 だが、プレー面で主力選手との力の差は大きく、レギュラーには食い込めない。主将だけど控え――。不安定な立ち位置に時に葛藤を覚えつつも、「ベンチから声を出して頼りになる主将になろう」と決め、この夏を迎えた。

 そんな西嶋に、突如もたらされた代打の機会。それは「(主将が交代するという)大変な状況から、チームを引っ張ってくれた」と話す坂本が、西嶋に渡した夏のプレゼントだった。

 1ボール2ストライクで迎えた4球目。西嶋は内角の直球を振り抜いた。「打球が抜けた瞬間は必死で、ほとんど覚えていない」。打球は中前に飛び、安打に。一塁上で両手のガッツポーズを見せた。

 次の打者は打ち取られ、試合は終わった。ただ、チームをまとめ、最後に結果も残した控えの主将の表情はすがすがしかった。(三井新、平川仁)