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 詐欺だ。でも違うかも――。そんな葛藤をしながらも、長野県伊那市のタクシー運転手が県警に相談したことで、高齢女性の被害が直前で食い止められた。伊那署は13日、飛鳥利一さん(69)=同市中央=に感謝状を贈った。

 「午後1時の特急に間に合うように、茅野駅へ行ってほしい」

 飛鳥さんは6月17日午前、南箕輪村で80代女性を乗せた。月1、2回、通院や買い物でタクシーを利用し、飛鳥さんも顔なじみ。珍しい行き先に、飛鳥さんが声をかけると、女性は手提げかばんを大事そうに抱えながら、「知人にどうしても会わなければいけない」と言葉少なに答えたという。

 駅に着いたが、それらしき人はいない。女性が車から降りて「知人」に電話すると、今度は東京・八王子に来るよう指示された。「十中八九、詐欺だ」。飛鳥さんは確信した。

 だが、女性は信じ切っている。怒らせるわけにもいかない。改札を通る女性を見送るしかなかったが、会社へ戻り、同僚に話すと吹っ切れた。「間違ってもいい。今なら間に合う」。すぐに伊那署に相談した。

 女性には息子をかたる男から「投資に失敗した。300万円を知人に渡してほしい」と電話があったという。同署は虚偽の電話と確認。連絡を受けた警視庁の警察官が、八王子駅で詐欺グループの「受け子」と会う直前の女性を保護した。

 「本当は茅野駅で止められればよかったんだけどね」と飛鳥さん。同署の土屋秀夫署長は「すぐに警察に相談なんてなかなかできない。機転の利いた行動でした」とたたえた。(里見稔)