【動画】成田空港の検疫検査場に設置された仮設ブースでPCR検査を受ける日本に到着した旅客ら=藤原伸雄撮影
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 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらぬ中、成田空港では入国する人が急増し、それに伴い感染者の確認も相次ぐ。水際で防疫を担う厚生労働省成田空港検疫所は、入国者ほぼ全員へのPCR検査だけでなく、「平時」にはない、様々な業務や対応に追われる。(福田祥史)

 成田空港第2旅客ターミナルビルの、今は新型コロナウイルスのPCR検査結果を待つ場所として段ボールベッドが並ぶ広いフロアに、男性(69)はいた。

 6月末。週末の夕刻のこと。男性はその朝、マレーシアから帰国した。車いすに座る。両足がギプスで固定されている。現地でホテルの階段を踏み外し、骨折したのだという。

 PCR検査の結果は陰性だった。14日後まで、自宅か自分で確保したホテルで待機しなければならない。だが、移動に公共交通は使えない。自宅は滋賀県内にあり、所持金は1万6千円ほどしかないという。

 検疫所幹部が男性の地元自治体に電話して、対応を求めたが、「できない」との回答。「成田市に相談してほしい」と言われ、成田市に尋ねると、「週明けに検討する」。

 結局、田中一成所長の判断で、検査結果を待つ人のために国が用意した空港近くのホテルに泊まることになった。「よかった。ありがたい」。男性はほっとした表情を見せた。

 こうした行き場のない人の対応は、検疫所本来の任務ではない。ただ、田中所長は「着の身着のままで帰ってきた人を、放り出すことはできない」。同様のケースは他にもあるという。

 男性が泊まったホテルでは、検疫官15人に民間の派遣などを含め数十人が対応にあたる。数人から十数人が乗った専用バスが着くたびに、バスからロビーまで荷物を運ぶ。玄関で検温や書類を確認し、いわゆるチェックイン手続きをして、食事を手渡す。

 医師や看護師、食品衛生監視員らが常駐し、滞在者の体調や衛生の管理にあたる。相談や苦情の電話に24時間対応するのは、大幅な減便で乗務が減っている日本航空の客室乗務員らだ。

 検疫官は全国の検疫所から応援に来ている。責任者を務める那覇検疫所の三好英文次長は「ただでさえ疲れて帰国された皆さんが、家に帰れずにホテルに来られる。落ち着けるよう対応するのが役目」。検疫官の一人は「ホテルマンと同じですよ」と話した。

 「これは『r』ですか、『v』ですか」「この電話番号は誰のですか」。PCR検査の検体採取前にある質問票の確認。検疫官が体調や、日本での滞在住所、移動手段、検査結果を通知する電話番号、メールアドレスの記入を求める。これに時間がかかるのが、検疫が長引く要因の一つだ。

 「日本語も英語も話せない外国人が増え、作業が難しくなっている。『決まっていない』『どうしたらいいか分からない』という答えしか返ってこない人もいる」と、6月末まで務めた桜田紳策・前検疫課長。書いた内容が二転三転する人もいるのだという。

 若い検疫官の一人は「やることが相当増えた。言葉が通じない場合、こちらの説明が確実に理解されているのかの確認も難しく、かなり神経を使う」。その一方でこうも明かす。「『すごく大事な仕事だから頑張ってください』と言ってくださる方もいるので、頑張ろうという気持ちになる」

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