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 独自大会の開催を検討――。夏の選手権大会の中止から8日後の5月28日、テレビニュースでは「成果が出せる場を作ってもらえてうれしい」と球児が喜んでいた。その声をよそに、長岡高専の野球部監督、内山隆平(29)は頭を抱えていた。

 県立校は6月8日に部活動が再開されることになっていたが、国立の高専では再開のメドは立っていなかった。

 高専の部員は3年4人、2年3人の計7人。高専は5年制だが、高野連主催大会には3年生までしか出場できない。昨秋の県大会は部員不足で欠場。新入生などを集めれば9人を確保できるかもしれない。だが、独自大会までに練習を再開できるのか。できても、試合にのぞめる状態になるのか。不安が残った。

 「大会には出られないのでは。選手たちにどう伝えるべきなのか」。内山は明確な方針を示せないまま時間が過ぎていった。

 県立校で通常授業が再開した6月1日、高専では、学年やクラスを分けての分散登校が始まった。その日、主将の松山悠大(3年)から内山に「お話があります」とメールが届いた。登校日の4日の放課後、松山は同じクラスの木村耕也(3年)とやってきて、落ち着いた口調で言った。

 「夏の大会への出場は諦め、3年生は部員集めと新チーム作りに集中します」

 「勉強に集中したいのでやめます」と言われることは想定していたが、黙々と練習に取り組むふだんの松山の様子からは「予想外の言葉だった」という。「自分たちで決断して答えを持ってきてくれた。いつの間にこんなに成長していたのか」。内山は部長らと話し合い、独自大会への欠場を決めた。

 松山は選手権大会の中止が決まった後、3年生にLINEなどで部員集めと秋以降の新チーム作りに集中することを提案していた。「後輩に同じ思いをさせたくない」との思いからだった。仲間も「練習もできない今、他にできることがあるなら全力でやろう」と賛成してくれた。

 分散登校という限られた時間で、出身中学の後輩などを通じて野球経験者に入部を呼びかけた。13人の1年生が集まった。野球部に関わって8年目の内山も「新入部員が10人を超えたのは記憶にない」と話す。

 7月13日から1~3年生は通常授業に戻り、部活動も再開された。14日、1年生を含む野球部員が初めて集まり、今後の練習予定を話し合った。部員の前で松山は笑顔だった。「秋の大会では、自分たちが残せなかった成績を残して欲しい。そしてなにより、このチームで良かったと思ってほしい」。チームの未来を後輩につなぐ夏は、始まったばかりだ。=敬称略