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 「主将の小出です。大会までは短いけれど、頑張りましょう」

 あいさつはしてみたものの、名前がわからないチームメートもいた。

 福島高専、四倉、好間のいわき市内3校でつくる「いわき連合」の主将、福島高専の小出光(3年)は、戸惑っていた。独自大会の開幕を1週間後に控えた今月11日のことだ。

 3校は部員が少なく、単独で試合に出場できないため、昨秋以降、一緒にチームをつくった。小出は、高専の柳沼仁志監督が連合チームでも監督だからという理由で、主将に選ばれた。

 年明けからは毎週末に合同練習をするはずだった。だが、コロナ禍で一度も集まれず、この日、今年初めて3校がそろった。

 春に入った他校の新入部員さえ知らなかった小出。そもそも「寄り合い所帯」であるうえに、合同練習もままならなかったことで、「いくらなんでも、まともに試合ができるのか」と気をもんでいた。

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 入学当初はロボット技術研究会とどちらに入部するか迷ったが、「ロボ研の方が厳しそう」で中学でやっていた野球を選んだ。

 1年生の冬には、茨城県境に近い勿来海岸まで往復50キロの走り込みがきつくて、一度は退部した。将来は自動車関係の技術職に就くため、勉強に専念しようとも思った。

 だが、寮の部屋で勉強していると、何となく素振りをしてしまう。2カ月後、見かねた先輩が部屋を訪ねてきた。「またやろうよ」と背中を押され、野球部に戻った。

 昨夏は高専の単独チームとして出場し、初戦で敗退した。2年前はシード校を相手に1勝しただけに、悔しかった。強豪ではないものの、「先輩たちのためにも、今年の夏は福島高専として1勝したい」と思うようになった。

 だが、新型コロナの影響で練習ができない。1年生の勧誘もできず、新入部員のけがを心配した柳沼監督は登録をあきらめ、夏は連合チームで出場することにした。

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 今月11日の顔合わせの後、平商業(いわき市)との練習試合もあった。当然、送球や捕球のミスが連発。併殺の好機もベースカバーに誰も入らず逃した。一回、7点を失った。

 「ナイスボール!」「オッケー、ドンマイ! 切り替えていこう!」。小出は気まずい雰囲気を変えようと、センターから思い切り声を出した。

 すると、遠慮がちだったナインから次第に声が出るようになり、一方的だった流れが変わった。守備がつながり、二、三回は0失点。小出も3安打。敗れはしたが、5点を返した。

 終了後、四倉の熊谷祐人主将、好間の伊東大生主将と集まった。ミスの多さなどの課題が挙がったが、「やっぱり9人集まって試合できるって楽しいね」。

 「正直、もっと早く集まって野球がしたかった」と小出。開幕までわずかだが、まとまって戦えるようになりたい。いわき連合の夏が、ようやく動き出した。=敬称略