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私の一冊「青春を山に賭けて」(植村直己著)

 勉強はできないし、けんかっ早い。完全な落ちこぼれで、15歳の時には入りたての高校でけんかして、停学処分を食らいました。「モヤモヤしているなら、旅に出ろ」と父に言われ、その道中、ふらりと寄った大阪の本屋で偶然手にしたのがこの一冊でした。

 「植村直己」といえば日本人初のエベレスト登頂や、世界初の5大陸最高峰制覇を遂げ、国民栄誉賞をもらった冒険家。でも、当時は聞いたことがあるような、ないような……。

 本の中の彼は普通の人で、むしろカッコ悪い。家は貧乏。明大山岳部でも一番体力がなくて、コンプレックスの塊で。でも「自分には今何ができるのか」って地道に、地味に、誰にアピールするわけでもなく一つずつ積み重ねていく。それがやがて、ものすごい冒険につながっていくわけ。

 停学中で「落ちるところまで落ちたな」なんてお先真っ暗の中、植村さんは一点の光に見えたんです。「今はダメでも、コツコツ重ねたら僕にも……」。山なんて登ったことなかったけど、その日から人生が変わりました。

 最近、講演に行くと高校生に「どうすれば無駄なく結果を出せますか?」って聞かれるんですよ。でもね、それはこの本が教えてくれている。何かを成し遂げる唯一の方法は、地味な一歩をコツコツと踏み出し続けることだけだって。(聞き手・吉永岳央

〈のぐち・けん〉 1973年、米ボストン出身。25歳の時、7大陸最高峰制覇を史上最年少(当時)で達成