ある目標を立てたとき、それが10年がんばっても達成できないなら、方法がまちがっているか、あるいは目標そのものが誤っているかを疑ったほうがいい。日本銀行が掲げる「物価上昇率2%」の目標は、その典型的な事例である。
日銀は15日、金融政策決定会合で政策の「現状維持」を決めた。その後の記者会見で黒田東彦(はるひこ)総裁に対し、この点を質問した。「10年達成できない目標は誤った目標の可能性が強い。もっと現実的な目標に見直すつもりはありませんか?」と。
だが、黒田総裁は私の問いを言下に否定した。「私はまったくそういう風に考えておりません」
続けてこう反論した。「目標も適切だし、手段も適切だと思っている。さまざまな事情によってこういう事態が続いている」
環境が悪いのだから、達成できないのは日銀のせいではない、とでも言いたかったようだ。
「物価上昇率2%」の目標は…

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