拡大する写真・図版高級ブランド店などが並ぶ「五番街」。日曜にもかかわらず、車も人もまばらだった=2020年4月12日午後1時38分、米ニューヨーク、藤原学思撮影

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 新型コロナウイルスへの感染者数が計40万人近くにのぼり、約2万5千人が亡くなった米ニューヨーク。世界有数の大都市として、東京との共通点も多い。東京の感染者数は約8300人、死者は326人(7月15日現在)と、ニューヨークに比べれば大幅に少ないが、16日には過去最多の286人を記録するなど、感染が拡大している。果たして東京が「第2のニューヨーク」となる可能性はあるのか。第一線の医師としてニューヨークで治療に当たってきたコロンビア大学助教授(循環器内科)の島田悠一さんに聞いた。

共通する「密」な環境

 ――ニューヨークも東京も世界的な大都市で人が多く、「密」な環境にあるという共通点があります。

 ニューヨークの面積は、東京23区に川崎市を足したぐらいです。人口は約800万人ですが、近郊に住んでいたり通勤したりする人たち、いわゆるニューヨーク都市圏の人々を含めると約1900万人になります。東京都の人口が約1400万人、都市圏の人口が約3500万人ですので、米国では最も東京に近い都市といえると思います。

 ニューヨークと東京には多くの共通点がありますが、異なる点もあります。医療、文化、対策の面においてどう違うのか、島田さんが読み解きます。

 通勤や通学のため、バスや地下鉄などの公共交通機関を利用するニューヨーク市民の割合は5割を超えます。ニューヨークにおける平日の地下鉄・バスの平均利用者数は761万人、年間輸送人員は22億人に上ります。米国の他の大都市と比べると群を抜いて高い数字です。

拡大する写真・図版ニューヨーク市民の通勤、通学手段 地下鉄、バスなどの公共交通機関を利用している人が半数以上いることが分かる=島田悠一氏提供(https://standardization.at.webry.info/200909/article_5.htmlから引用)

 平均通勤時間も、米国の他の大都市より長くなっています。これは、車社会である米国の他の大都市に比べて公共交通機関を利用する人が多いという要素に加えて、郊外に住み市内中心部に通勤する人が多いことを反映していると考えられます。

拡大する写真・図版米国の大都市において通勤に公共交通機関を利用する人の割合と平均通勤時間 右上の大きな円がニューヨーク市。米国の他の大都市と比べて公共交通機関を利用して通勤する人の割合(横軸)が極端に高く、平均通勤時間(縦軸)も長いことが分かる=島田悠一氏提供(U.S. Census Bureau, American Community Survey 2006, Table S0802より改変)

 ――多くの人が集まる店や施設も多くあります。

 数多くのレストランやバー、劇場、美術館、博物館、ナイトクラブ、映画館、コンサート会場、スポーツジムがあります。観光客も含め、それぞれの場所に毎日多くの人が集まるため、いわゆる「3密」の状態が生じやすいという点も東京に似ています。

日本と異なる文化

 ――反対に東京とニューヨークが違う点はなんでしょう。

 呼吸器感染症の拡大という観点からみると、マスクへの意識の違いが大きいでしょう。新型コロナ以前は医療従事者でもマスクをあまりつけていませんでした。もしつけていると、かえって職場で同僚から体調を心配されるような文化でした。さらに大きな視点から言えば、マスクを含めた感染対策をどれだけ順守してきたかという差があるかもしれません。

 米国民には建国以来、個人主義が強く根付いており、政府や科学者など他人から行動を押し付けられたり制限されたりすることを嫌う人が一定数存在します。

 実際、今回の感染拡大に際してもマスクや外出禁止への反対デモが各地で起きました。不要不急の外出をする人、3密を避けない人、手洗いや消毒などの予防法を行わない人も多く見られました。また、いわゆる「同調圧力」といった概念も米国にはほぼ存在しません。

 ――こうした文化の違いが感染者数に影響したかもしれないのですね。

 日々の感染対策は、新型コロナのような呼吸器感染症の拡大予防のためには非常に重要です。基本的なことを一人ひとりが守ったことで、東京の感染者数は米国より低く抑えられたのかもしれません。

拡大する写真・図版ニューヨーク市内の病院から出た遺体を安置していた冷凍トラックの列。向こう側には「自由の女神像」が見えた=2020年5月18日、藤原学思撮影

 ――他の要素として考えられることは?

 国外からの人の流入をどの段階でどれだけ強く規制したか、という点です。ニューヨークでは中国からの航空便は比較的早い段階で停止したのですが、ヨーロッパからの便に対する対応は遅れ、結果として感染の拡大につながったのではないかと指摘されています。

 また、これは東京との比較ではなく米国のほかの都市との比較なのですが、サンフランシスコなど第1波の抑え込みに比較的成功した都市に比べて、ニューヨークのロックダウン(都市封鎖)は1週間ほど遅く、この間に感染が拡大したのではないかとみる専門家もいます。

動物用の人工呼吸器も検討

 ――ニューヨーク市では2人で一つの人工呼吸器を使うことや、動物用の人工呼吸器の転用も検討されました。

 これらの手段には色々な問題が伴うため、最後の手段として許可されたものです。私の知る限りでは、実際にこれらの手段を検討しなければいけないという事態には至らなかったと認識しています。

 当初はニューヨーク州全体で3万台、ニューヨークで1万5千台の人工呼吸器が必要になると予測されたのですが、実際に必要となった数はピーク時で約5千台と、大幅に少なかったことによります。

 ニューヨークは現在、感染者数・入院者数ともに少ない状態ですので、今の状態が続けば、これらの最終手段が必要になることはないと思います。ただ、米国の南西部の州ではまだまだ感染が拡大しているので、そういった事態になる可能性は否定できません。

 ――日本の感染者数が欧米より少ない要因として、色々な仮説が出ています。

 そうした仮説には、ウイルスへの感受性の違いや交差免疫、BCGの効果などが含まれることは承知しています。ただ、現時点ではいずれも科学的根拠の蓄積が不十分なため、これらの仮説を基に日本人が感染しにくい、または重症化しにくいと信じて行動するのは危険だと思います。ニューヨークにいる日本人も多く感染していますし、重症化した方や亡くなった方もいらっしゃいます。

いまは小康状態だが…

 ――市民生活に変化はないのですか。

 ニューヨークは累積感染者が3…

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