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 アフリカ最南端にある南アフリカの最大都市ヨハネスブルク。治安が悪いイメージが強いこの街に暮らして3年。最近は新型コロナウイルスの感染者が急増(15日時点で累計31万1049人)し、世界で8番目に累計の感染者が多くなっている。外での取材はもちろん、安心して買い物もできない状態が続いている。貧困層も多いこの国の現状と、コロナ禍での私の体験を紹介したい。

 新型コロナの感染拡大を受けて、南アフリカがロックダウン(都市封鎖)を始めたのは3月26日深夜。空港は閉鎖され、スーパーや薬局、銀行など、必要不可欠と指定された店以外は閉められた。

拡大する写真・図版ロックダウンが始まった3月27日、南アフリカ・ヨハネスブルクのサントン地区は人影もまばらだった=石原孝撮影

 翌日、街の様子を見ようとビジネス街のサントン地区周辺を訪れた。普段は朝夕に渋滞の列が続いた場所に車は走っておらず、大勢の人でにぎわうショッピングモールも人影はまばらだった。ゴーストタウンと言えば大げさだが、それに近い感じだった。

 より気になったのは、あちこちの信号つきの交差点に立っていた「主」が消えたことだった。

 感染が流行する前には、汚れた服を着て、信号待ちの運転手に食事を求める男性や、頼んでもいないのに洗剤入りの水を車の窓ガラスにかけて、拭き取った代金を求める若者、得意のダンスを披露してお駄賃をもらおうとする子どもたちがいた。

 彼らは、どこに行ったのか?

食糧配給に集まる人々

 支援団体が4月9日にサントン地区周辺で実施した食料配給に、彼らの姿はあった。草が生い茂った広場に集まったのは約千人。銃を持った警察官が「感染しないように間隔を空けて列に並んで」と指示していたが、多くの人が言うことを聞いていなかった。

 無理もない。万が一にも配給を受け取れなければ、今日明日の食事がないかもしれないのだ。迷彩柄の服を着て本格的な銃を持った治安部隊の隊員がにらみを利かせ、ようやく距離を空けるようになった。

拡大する写真・図版南アフリカのヨハネスブルクで4月9日、食料配給の列に並ぶ人たちに、他人との距離を空けるように指示する治安部隊の隊員ら=石原孝撮影

 食パンやトウモロコシの粉などを受け取ったペギー・ムシャバさん(56)に声をかけると、「6人家族なので、2日もすればなくなってしまう。少しずつ使っていくしかない」と嘆いた。夫は無職で、感染流行前は交差点で信号待ちの運転手からお金や食事をもらっていたという。トタンで囲われた自宅に水道はなく、せっけんを買う余裕もない。

 「外出禁止措置は早く終わって欲しいけど、感染するのが怖いからずっと家にいる」と話した。列に並んでいた別の男性は「このままだと、コロナより貧困で死んでしまう」とこぼした。

記者の前で「生きていけない」

 約2週間後、私がマスクを二重に着け、自宅から少し離れたスーパーに車で向かっていると、十人近い男性たちが道路のそばに立っていた。「何でもいいからくれないか。生きていけない」と叫んでいた。トタンでできた彼らの家は、数十メートル先に見えた。外出制限違反を取り締まる警察の目を気にしつつ、自宅近くで物乞いをしていたのだ。

 普段の私なら、見て見ぬふりを…

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