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 夏季兵庫県高校野球大会は18日に開幕する。8強で打ち切られ、甲子園はめざせない独自大会だが、昨秋の兵庫大会4強だった進学校の長田には1打席にかける球児がいる。外野手の大西響貴(ひびき)(3年)。大会を前に、右ひざの前十字靱帯(じんたい)断裂と半月板損傷の大けがをしたが、背番号「18」をつけ、兵庫との初戦に臨む。

 15日の練習後。グラウンドで永井伸哉監督から背番号の発表があった。兵庫の独自大会は20人がベンチ入りできる。「普段とは違う大会。3年生19人全員をベンチ入りさせる」と永井監督は決め、事前に部員たちにも伝えていた。

 1番から順に呼ばれて18番目。大西は監督の正面に立つと両手を伸ばし、一礼して受け取った。「ベンチに入れるとわかっていても、受け取って現実感も出てきた。責任がある」と気を引き締める。

 約1カ月前の6月17日。新型コロナウイルスの影響による休校が明け、約2カ月ぶりに全体練習が再開して3日目だった。久しぶりの実戦練習で、体がついていかなかったのだろう。外野ノックで左翼から深い打球を追いかけ、グラブを思い切り伸ばした時に足がもつれた。「グキッて音がした」

 翌日、病院でMRI検査をし、22日の午前中に診断を聞いた。ショックよりも、何とか試合に出たいという思いが強かった。「ごまかしても、何とかならないでしょうか」。医師に必死に問いかけていた。

 その日の昼休み、職員室の廊下で永井監督に症状を報告した。「どうしたいん」。監督の問いかけに迷わず答えた。「最後、打席で勝負して終わりたいです」。真剣な目つきに、永井監督は「やめとけ」と言いかけた言葉をのみ込んだ。「できる練習をしていこうや。最後、これまでの成果を出そう」。本人の意思を尊重した。

 医師の許可を得たうえで、右ひざに固定具をつけ、練習を必死にこなした。上半身の筋力トレーニング、いすに座っての素振り、立てた棒の先に置いたボールをネットに打ちこむ置きティー。周囲から「無理するなよ」と言われたが、次第に「言っても無理するから仕方ない」と見守られるようになった。

 懸命にリハビリに励み、7月上旬から軽いジョギングもできるようになった。マシンを使った打撃練習も再開。右ひざに負担がかからないよう、フォームも工夫し、右のつま先を投手方向にずらす打ち方に変えた。「まだ動く球に目が慣れていない。試合までに感覚を取り戻したい」

 昨秋も2桁の番号をつけてベンチ入りした。監督から声出しなどのベンチワークを評価されていることも、打席に立てない可能性が高いことも理解している。「勝つための戦力になりたい。ベンチに入るからには役に立ちたい」。最後まで、できることを精いっぱい全うするつもりだ。(大坂尚子)