山崎賢人、表現者として「譲りまくり、折れまくり」
神宮桃子
のびたぼさぼさ髪に無精ひげ、物憂げで投げやりで。今までにない山崎賢人が目の前に現れた。場の空気がさっと変わり、どぎまぎした。映画「劇場」で演じる、永田そのもの。行定勲監督に「ひげ生やせる?」と聞かれ、「生えるかわからないけどやってみます」。その結果、野性味ある新たな姿に。目が隠れるほどの前髪なども「全部、永田の自己表現。人との壁、よろいでもあるのかなと思いながらやっていました」と言う。
永田は、演劇で成功を夢見るが、うまくいかない現状に倦(う)んでいる。服飾の学校に通う沙希(松岡茉優)と出会い一緒に暮らすように……。又吉直樹の小説が原作だ。山崎は原作を読んだときに、永田に又吉の雰囲気を感じ、又吉の動画をたくさん見たという。「関西弁だし、ゆっくりしゃべるところとか、何か盗める部分があるのではと思って」
友人と立ち上げた劇団では団員に愛想をつかされ、ろくに稼がず沙希に食べさせてもらうばかり。明るく支える彼女がうとましくなる。そんな永田の「ダメな部分」に共感したという。「演劇で成功したいと思っているけど、なかなか世間に認められない。そんな中で、自分が安心できる場所や、優位に立って楽でいられる場所を探す弱さ。やりたいことがうまくいかないから、人に優しくできない。そういう部分がすごくリアルだと思った」
松岡茉優は「すごく努力家」
今年で俳優10年。主演映画…