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 事故などで腕を失った人が、ないはずの腕の痛みを感じる「幻肢(げんし)痛(ファントムペイン)」を軽減する方法を、大阪大などの研究チームが開発した。幻の腕の映像を作り、患者の脳活動を読み取って映像を動かす訓練をしたところ、痛みが弱まった。新しい治療法になる可能性がある。研究成果を米専門誌ニューロロジーに17日発表した。

 手や足を失ったり神経損傷で動かせなくなったりした人の中には、頭の中ではまだ動かせる手足があるように感じ、通常の痛み止めが効かない幻(ファントム)の手足の痛み(ペイン)、幻肢痛に苦しむ患者がいる。

 痛みの原因は、手や足を動かせないことに脳が適応できないためだと考えられている。そこで研究チームは、患者の動かせる腕の写真を左右逆転させて「幻の腕」の映像を作製。患者12人に、この腕を動かそうと考えてもらう訓練をした。

 訓練には「ブレーン・コンピューター・インターフェース(BCI)」と呼ばれる、脳信号でコンピューターを操作する技術を利用。患者が残る腕を動かす時の脳の活動を記録し、この特定の脳信号が検出された時だけ、幻の腕の映像が動くようBCIを設定した。

 3日間の訓練後、患者に痛みを主観的に評価してもらうと、訓練の5日後で平均で36%痛みが減った。特定の脳信号を使わない訓練では効果はみられなかった。鏡に動かせる手を写して幻の手があるように錯覚させ、幻肢にかかわる脳の活動を強化する訓練法と同程度の効果があったという。

 訓練の効果は次第に薄れていくため、定期的に訓練を行う方法や、脳波など簡単に脳活動を測って利用する技術開発を進めて、応用につなげたいとしている。

 チームの柳沢琢史阪大教授は「これまでは脳の情報処理を制御する治療法はなく、多くの患者さんがじっと痛みに耐えてきた。技術の医療応用を進めていきたい」という。(瀬川茂子