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 やめるか、続けるか。3年生の心は揺れた。

 甲子園で春夏1度ずつの準優勝を誇る古豪の土佐(高知)は、4人の3年生を軸に大会に臨む。悩んだ末、3年生18人のうち14人が引退する道を選んだ。

 「今年の甲子園がなくなった直後は、やめようかという雰囲気がみんなにあった」。大会出場を選んだ主戦の竹村拓記君は振り返る。夏の甲子園の大会が中止され、西内一人監督は3年生全員と面談した。多くの部員が進路への不安を口にした。

 西内監督は「休校中、勉強に不安を抱えた部員が多い。野球は好きでも、甲子園の舞台がなくなった中でモチベーションを保つのは難しかった」。県内で屈指の進学校として知られる同校。目指す大学で野球を続けるため、早期の引退を決意した部員もいた。

 竹村君とともに大会に出場する副主将の森慎ノ輔君は最後まで悩み抜いた。「受験モード」に入る同級生を見て焦りを感じていた。答えを出したのは6月の引退試合の朝だった。「最後までやるのが支えてくれた親への恩返しだ」

 4人は部を去った仲間に理解を示し、前を向く。清水智也君は「残り少ない練習を全力でやって、悔いのない夏にしたい」。滝田海生主将は「引退した人たちは塾で頑張っている。僕らは野球を頑張る」。

 高知高専は新型コロナの影響で出場を辞退した。感染拡大防止のため、学校側は5月11日から8月7日まで授業は原則遠隔で行うと決めた。部活動も禁止となり、出場辞退は避けられなかった。いまだに部員が顔を合わせる機会はなく、1年の入部も未定だ。八木潤部長は「生徒の安全を考えた学校の方針の中で、野球部だけ活動することは難しい」と話す。

 今春の選抜大会も中止となり、出場を決めていた明徳義塾では、3年生が「夏に甲子園に行こう」と励ましあってきた。それだけに「夏の甲子園」の大会中止は大きなショックだった。県独自の大会や選抜大会出場予定校32校を甲子園に招待する交流試合の開催が決定した。だが、一度切れてしまった「勝利への熱意」を取り戻すのは難しい。

 「自分も一からやり直すからついてきてほしい。最後まで頑張ろう」。6月の練習試合後、鈴木大照主将は涙ながらに3年生に訴えた。この3年間で初めて仲間に見せた涙だった。副主将の奥野翔琉君は「ばらばらだったチームが、主将の言葉で変わった」。

 新たな目標は県の独自大会で高知1位を取り、甲子園の交流試合に臨むことだ。昨夏の甲子園で登板した新地智也君は「思い切りプレーをして、勝って終わりたい」。