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 外国人旅行者に地方に足を延ばしてもらうことが目的の国の「観光立国ショーケース」に選ばれている北海道釧路市。5年で訪日外国人の延べ宿泊客数の倍増をめざすが、最終年となる今年度、新型コロナウイルスの世界的大流行で目標達成は絶望的だ。

 阿寒摩周国立公園の玄関口、阿寒湖温泉。6月19日に都道府県間の移動制限が全面解除になって以降、観光客は道内からを中心に少しずつ戻ってきた。だが外国人の姿はほとんど見かけない。

 夜の観光の目玉として昨年7~11月、国立公園で初めて催されたのが体験型ナイトウォーク「カムイルミナ」だ。森を歩くと幻想的なデジタル映像が映し出される演出が好評で約3万4千人が訪れた。

 大勢の外国人に来てほしいと、運営する「阿寒アドベンチャーツーリズム」は今年度、多言語に対応するスマートフォンアプリを準備していた。だが、4月の政府の緊急事態宣言を受けて、5月22日からの営業開始予定を1カ月ほど延ばした。結局、5月19日、感染拡大の収束が見通せないとして今年度の中止を決めた。

 「世界各国の渡航規制解除のめどが立っていない現状を踏まえると、訪日外国人観光客の需要回復は、今年度は相当厳しいものがあると認識している」

 6月10日の市議会本会議で、菅野隆博・観光振興担当部長は観光の見通しをこう説明した。

 「観光立国ショーケース」は、観光資源を生かして世界に通用する観光地域をつくり、訪日外国人旅行者を地方へ誘致するモデルケースにするのが目的。観光庁は16年1月、全国で釧路、金沢、長崎の3市を選んだ。

 釧路市には、阿寒摩周と釧路湿原の二つの国立公園があり、自然と共生するアイヌ民族の文化を体験できる――。インターネットを使いやすくするワイファイ化、トイレ整備、案内表示の多言語化などを進め、欧米豪・アジアの富裕層向けにPRをしてきた。

 5カ年計画の最終年となる20年度、訪日外国人の延べ宿泊客数の目標は「27万人」。15年度実績の約14万人の2倍にあたる。

 釧路市は20年度、「地域資源を生かした世界一級の観光地域づくり」に約2億4千万円の予算を計上した。主に中国や台湾からの誘客を狙って、旅行会社への支援や情報発信などを計画していた。

 観光を巡る指標は上々だった。19年度の釧路市への観光入り込み客数は約530万7千人と、前年度を約5千人上回り過去最多となった。ただ、19年度の訪日外国人の延べ宿泊客数は約14万人で、前年度より約2万人減った。日韓関係悪化の影響は小さかったが、今年1月下旬以降の新型コロナの感染拡大で予約キャンセルが相次いだことが大きいという。

 日本政府観光局によれば、日本全体の訪日外国人客数は4~6月は計7200人程度で、3カ月連続で前年同月の99・9%減。外務省によれば、日本が入国を拒否している国・地域は増え、7月17日現在で129に上る。出入国在留管理庁の担当者は「世界では感染拡大が収まらず、入国拒否の国・地域を減らす状況ではない」という。

 8月には、国際拠点空港の成田と釧路の往復航路が設けられるという明るいニュースがあるが、訪日外国人旅行者が戻る見通しは立たない。釧路港へのクルーズ船の寄港は7月17日現在、今年予定の15回のうち13回が中止となった。

 鈴木稔・観光振興室長は「国からは『ショーケース』の計画見直しなど、何の話もない。まずは国内の観光客の誘客に努めていくしかない」と話す。(高田誠)

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