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(18日、宮城独自大会 仙台商 14 - 1 加美農)

 五回表、一度は降板した加美農の主将でエースの桑島直生君(3年)が再びマウンドに上がった。後ろを振り返り、「絶対に0点でいくぞ!」と叫ぶ。点差は9点。半数近くが初心者の仲間たちは、疲れが顔に出始めていた。

 つい先月まで部員は2年生1人、3年生2人の計3人。実戦形式の練習はおろか、ノックも捕球後はネットに投げ込んだ。

 厳しい練習環境でも、唯一の同級生、氏家崇文君(3年)とは「新たな歴史を作ろう」と踏ん張ってきた。左投げ同士でバッテリーを組んだり、エースを争ったりした。

 環境が変わったのは、独自大会開催が決まった6月中旬。8人の新入部員が一気に入ってきた。「びっくりという気持ちが一番」と桑島君。大会までの1カ月、チームで練習できる喜びをかみしめた。

 そして、4年ぶりに念願の単独出場。相手は第2シードの強豪・仙台商だ。試合前、初心者の1年生たちは緊張で体がこわばっていた。そんな様子を見て、桑島君や氏家君が背中をたたいて、「楽しむぞ」と鼓舞した。

 先発した桑島君だが、味方の失策も重なって10点を失い、4回途中で降板。救援したのが氏家君だ。177センチ92キロの巨体から繰り出す横手投げで、何とかその回をしのいだ。

 「もう1回いこう」。桑島君が再び、佐伯友也監督に送り出された。

 「最後かもしれない。主将らしい姿を」と臆さず腕を振り、大胆に内角を攻めた。死球と4安打でさらに4点を失ったが、下は向かなかった。最後の攻撃では走塁コーチに出て、三振にうなだれる後輩に「ベンチまで走って」と声をかけた。

 スタンドにあいさつした途端、涙で顔がぐしゃぐしゃになった。「やっぱり勝ちたかった」と悔しさを口にした。それでも、佐伯監督は誇らしげだった。「大敗でも粘り強く戦い、チームの歴史に残る新たな一歩だった」(大宮慎次朗)