[PR]

(18日、京都独自大会 洛東 4 - 2 田辺)

 2―2の同点で迎えた三回表。1死満塁の緊張の場面で、洛東の「驚異の回復男」こと、寺田隼斗君(3年)が打席に立った。

 3週間前、練習で打球が右足に当たり、くるぶしを骨折。全治1カ月でギプスが足に巻かれた。落ち込んだが「絶対間に合わせてやる」。気持ちを「早期回復モード」に切り替えた。

 整骨院では、超音波治療や酸素カプセルでの治療を続けた。人間本来の治癒力を高めるため、午後10時には寝て、朝1合、夜3合のご飯を食べた。

 友だちや家族の援護も受けた。村瀬翔音人(しょうと)君(3年)からは煮干しの大袋で。「カルシウム取らなあかんから、食べろよ」と言われ、休み時間に食べ続けた。母の恵さん(41)には毎晩、魚や肉、野菜をふんだんに使ったおかずを10品近く作ってもらった。鮮魚店に勤める恵さんは、お得意先の料理人に「骨折には魚を食べさせな」と言われ、朝食には焼き魚を欠かさなかった。

 けがから1週間後。診察を受けると、想定より早く治癒が進んでいた。驚いた主治医は「サポーターは要らないね」。その日から軽いジョギングや素振りを開始。初戦に間に合わせた。

 「ようやく、この場に立てた」。奮い立つ寺田君に、角田裕悟監督(36)はスクイズのサイン。大役だ。バットをぐっと伸ばして当てた。全力ダッシュすると、セーフに。その間に2人が生還。これが決勝点になった。

 「けがも悪いことばかりじゃなかった」と試合後にニヤリ。骨折してから体重が2キロ近く増え、バットを振る力も強くなったという。野球にも勝利にも必死に食らいついた。結果は裏切らなかった。(白見はる菜)

     ◇

 「パンッ」「パンパンパンッ」。太陽が丘球場での試合中、風船が破裂したかのような大きな音が何度も響き渡った。第2試合に登場した田辺のマネジャー、米良空瑠海(くるみ)さん(2年)の拍手の音だった。

 今大会は新型コロナウイルス対策で無観客試合。スタンド観戦できる控え部員や一部の保護者らも、飛沫(ひまつ)を飛ばさないよう大声は禁止され、応援は拍手などに限られる。

 そんな制限もなんのその。米良さんは両手をおわん型にして、思い切りたたきつける。パンッ。

 拍手の音が人より大きいことに気がついたのは、中学1年のとき。全校集会で友だちに「お前の拍手、耳が痛くなる」と苦情を受けたほどだ。この特技を応援に生かすことにした。

 チームは惜敗。だが、米良さんは「この会場で一番響かせられたと思う」と胸を張った。(白見はる菜)