富山)「人間的に成長させる」育成功労賞の杉森監督

田添聖史
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 「けがだけはするな。体の動きをちゃんと意識しろ」。砺波高校のグラウンドで、杉森清文監督(56)が優しく声をかけた。

 高校野球の発展に長年尽力した指導者を日本高校野球連盟と朝日新聞社が表彰する「育成功労賞」に、富山県内から選ばれた。旧福野、富山中部、そして砺波の3校で、計27年間にわたって球児の指導に力を注いだことが評価された。

 旧福野高の球児だった。夏の富山大会では3年連続16強。3年の時、当時優勝候補だった高岡高を初戦で破ったのが思い出という。進学した日本体育大でも野球部に入った。卒業後、教員として「自分を育ててくれた土地で次の世代を育てよう」と富山に戻った。

 20代の頃は「前のめり」の指導だった。勝ちたい一心で、筋トレと打撃を中心に厳しいメニューを組んだ。しかし、当時も強豪だった石川県星稜との練習試合で、星稜部員が整然とかばんを並べ、大人と対等に会話しているのにショックを受けた。「人間的に成長させるのが指導者の責任と、イメージが固まった」

 大学で、チームメートと練習理論を独学した経験を生かし、各部員にあったメニューを模索した。フォームの無駄や関節への余計な負荷を減らすため、4キロの球を投げさせるという、大リーグでも近年流行している練習法を早くから実践している。地下足袋を履いたランニングも導入。足首の柔軟性と指で地面をつかむ感覚が養え、けが防止につながるという。指導した27年間で、練習についていけなかったり、大きなけがをしたりして退部した子がいないことが自慢だ。「野球を続けるには、まずけがをしないこと。体を制御する術は欠かさず教えてきた」

 それだけに、今夏の独自大会には、細心の注意が必要だと思っている。砺波は4月上旬から約2カ月、部活動を停止。再開後も2週間は毎日1時間といった具合で、「練習量が到底足りない。暑さが加われば、けがをする恐れも高まる」。

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 一方、苦境にあっても着実に成長していく部員の姿には、改めて頼もしさを感じている。3年生が相談して考える練習メニューが最近、自身の考えに近づいてきた。「実力やチームの状態をわかってきた証拠。気持ちよくプレーできるよう、自分も全力を尽くさないと」と言い聞かせる。

 もう一つ伝えたいのは、野球を通じて得られる「出会い」の大切さだ。

 大学時代のチームメートたちは全国各地で指導者になっている。今回の功労賞選出が報道されると、LINEで十数件の祝福が届いた。県内にも、野球の指導に携わる教え子がたくさんいる。「今の部員にも長いつながりを作らせてやりたい。でも、対戦すると戦術を読まれるのが困りもの」と笑顔を見せた。(田添聖史)