今回と次回は、うちの施設で「看取り犬(みとりいぬ)」と呼んでいる文福(ぶんぷく=オス)にまつわる物語をお伝えします。保健所から引き取った柴犬系の雑種です。利用者さんのにおいの変化などを感じるのか、必ず亡くなる数日前に、居室の扉の外でじっとうなだれ始めるのです。まるで「死期」を予期するかのようです。
まず、吉田達夫さん(享年82)のケースを紹介しましょう。2012年に入居、穏やかに暮らしていました。しかし5年たったころから寝たきり状態になり、18年5月にはほぼ意識がない昏睡状態になりました。
5月中旬、医師から「余命1週間」と告げられます。そのころ担当の介護職員から耳を疑う提案をされました。元漁師の吉田さんを思い出の佐島漁港(神奈川県横須賀市)に連れて行きたい、というのです。車で15分ほどの場所です。私は反対しました。いつ亡くなってもおかしくない状態だったからです。
でもその職員は食い下がりまし…
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朝日新聞社会部