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 新型コロナウイルス対策の一環として政府が推進する観光支援事業「Go To トラベル」が、22日に始まる。「全国区」の観光地である日光や那須地域では、期待の一方で、複雑な制度への戸惑いや、「東京除外」による予約キャンセルへの不安の声もある。独自支援事業「県民一家族一旅行」を始めた県の担当者も、頭を抱えている。

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 「非常にありがたい事業だが、制度をしっかりと頭に入れておかなければならない。でも、それができないでいる」

 那須塩原市の旅館「湯守田中屋」の田中佑治専務は、悩ましそうだ。

 「Go To トラベル」の事業説明書を読み、「個人客は全員の住所確認が必要だが、団体客は代表者だけでいいのか」などと疑問を感じた。「制度が二転三転して、予約客からの問い合わせにも明確に答えられない」

 一般社団法人「那須塩原市観光局」には、補助や申し込みなどに関する問い合わせが多い日で10件ほど寄せられてきたという。小林紀明事業部長は「制度が複雑で固まっていない部分があるのが気がかり」と話す。

 日光市・鬼怒川温泉の「あさやホテル」は、県の「一家族一旅行」事業で1千泊以上の予約があったが、東京都民が政府の事業の対象外となった影響による予約キャンセルで、約2割が相殺されたとみる。阿久津正史総支配人は「東京の感染者数が減らないことには客足が増えない」と話す。

 「日光市女将(おかみ)の会」の根本方子会長は「新型コロナの影響で、お年寄りの観光客が極端に減った」と感じる。県によると、県内宿泊客の3割は60歳以上。県観光交流課の担当者は「『Go To』が始まっても、感染を心配して旅行を控える高齢者は多いのでは」と心配する。

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 福田富一知事は21日、記者会見で「準備不足は否めず、それには注文を付けたいが、対策に万全を期してお迎えする」と語った。

 県によると、県内の宿泊客のうち東京都民は約2割を占める。政府の事業から東京都民が除外されたことについて、県担当者は「影響は大きい」と話す。

 県は、県民の県内旅行で観光需要を徐々に高めた後に、「Go To トラベル」で本格回復を目指す筋書きを描いていた。

 県内で感染拡大がいったん落ち着いた6月中旬、新型コロナ禍で打撃を受けた観光地の振興策として、「一家族一旅行」事業を始めた。宿泊代金が最大で半額になるクーポンを発行し、すでに7万泊分の予約が入るなど好調だという。

 しかし、東京で感染が再び拡大し、「東京由来」の感染者は関東に広がった。政府が「Go To トラベル」の22日開始を発表した10日以降、県内ではクラスター(感染者集団)が新たに二つ発生し、市中感染の防止が急務になった。

 県によると、県内宿泊客のうち、東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城の5都県からの客が約7割を占める。県幹部は「観光地の立て直しも大事だが、ここ1週間で、首都圏も県内も感染状況はさらに深刻になった。県外客を断ることはしないが、悩ましい」と言う。

 県担当者は、「Go To トラベル」の詳細がつかめないことにも頭を抱える。キャンセル料の補償が正式に決まったのは開始前日の21日。県には県民からの問い合わせが相次いでいるが、対象の宿泊施設や「一家族一旅行」と併用して補助を受けられるのかなど、詳しい制度内容を県も把握しきれていないという。(池田敏行、梶山天、池田拓哉)