【動画】高校球児へメッセージを送る俳優・伊原六花さん=寺尾佳恵撮影
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 第102回全国高校野球選手権大会が中止になったことを受けて、各都道府県の高校野球連盟が主催する独自の大会(日本高野連、朝日新聞社後援)が各地で開催される。俳優の伊原六花(りっか)さん(21)は大阪府立登美丘高校ダンス部キャプテンとして、高校時代をダンスに打ち込んだ。高校野球への思いや今年の球児たちへ贈るメッセージを聞いた。

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 3年前の第99回全国高校野球選手権で、大会歌「栄冠は君に輝く」にのせて踊るダンスCMに府立登美丘高ダンス部で参加しました。撮影は野球グラウンド。炎天下で砂ぼこりが舞う中でした。汗をぬぐうと砂だらけ。めちゃめちゃ日焼けしました。ダンス部は練習は基本室内なんですが、高校野球って外が当たり前じゃないですか。その環境の中、長時間の試合を集中力を切らさずやっているのはすごい。でも青空の下、汗を流すのって青春やなって思いました。

 振り付けは自分たちで考えました。「応援」をテーマに、バットを振ったりボールを投げたりする動きを取り入れて。紅白2チームで対決するようなダンスから、最後はそろって前進して一緒に踊る。高校野球のお互いを尊重し合うところが表現できたと思います。

 試合後、勝ってすぐに喜ぶのではなく、「ありがとうございました」と礼をする。負けた方は悔し涙を流す。高校野球のそんなところがかっこいいな、すてきだなと思っていました。高校時代はダンス漬けで練習が厳しくて試合は見られなかったのですが、甲子園で大阪の高校が勝っているとうれしかった。違う環境で頑張る同年代からパワーをもらっていました。

 ダンス部は入ってみるとめちゃくちゃ体育会系でした。先輩には前に回り込んであいさつしないといけなかったり、座る姿勢も決まっていたり。代々受け継がれているルールが厳しかった。でもみんな登美丘高校ダンス部であることに誇りを持っていて、ついて行きたいと思える先輩方でした。

 午前7時すぎから朝練で、昼休みには昼練。放課後ももちろん練習。大会前の夏休みは朝から晩まで13時間近く踊っていました。補食として練習の合間におにぎりやドーナツを1日5食食べる高校球児のような生活でした(笑)。

 最後まで走り抜けられたのは仲間と一緒だったから。2分半ほどのダンス中もラストのサビになってくるときついんです。でも横で踊っている仲間を感じ、ソロで踊る子には「がんばれ!」と大声を出すんです。みんなでやっているからこそだなと思っていました。キャプテンとしてきついこともたくさんありましたがそこで励ましてくれる子、無言で手伝ってくれる子の存在に助けられました。

 大会前は「14回ぶっ続けで踊る」という練習方法で、自信をつけました。緊張するのは準備が足りていなくて不安になるから。最後は踊れなくてふらふらになるんですが、14回踊ったというのが自信になるんです。これだけやったから本番の1回はきっと大丈夫だと思えました。

 一番力を入れた最後の大会は「バブリーダンス」で3連覇を目指しましたが、準優勝でした。親、仲間、コーチに支えてもらったのに結果が出せなくて申し訳なかった。周りの人の応援や支えてくれるありがたみを感じていたので、親への感謝を口にする球児の言葉を聞くとすごく共感します。

 高校時代は一番濃い期間でした。同じ方向を向いてここまで長時間一緒に戦える仲間っていうのはなかなかいない。得たものはよくある言葉ですが、「結果より過程が大事」。準優勝だったけど積み上げてきたことがあるから、今も大切な仲間なんだと思います。

 今年は普段と違う環境で戸惑うことも多いと思います。出演予定だったミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」シーズン3が全公演中止になりました。キャスト全員で力を合わせて作ってきたので届けたかったですがいつかできると信じて、今できることをしようと自分の中で答えを出しました。

 全国高校野球選手権大会が中止になりました。長い歴史でみると第102回の大会だけど、高校3年生にとっては「この年にかけていた」「やりたかった」というのが本音だと思います。自分がその立場だったら、負けるのとは違う悔しさや、もどかしさは絶対あると思います。

 目指していた大会がなくなるのはつらいと思います。でも都道府県で独自大会が開かれると聞きました。引退後に思ったことですが、好きなダンスに好きなだけ没頭できる環境があるのってすばらしい。少しだけ前向きに考えると、自分たちが好きな野球ができるのは素晴らしいことです。できるだけ前向きな気持ちで進んでいってほしいです。

 その日一日がハッピーに過ごせるかは、どれだけ自分がハッピーな気持ちで物事を見られるかだと思っています。高校時代に感じていたことですが、自分のテンションが低いと周りもそうなるし、高いとそれも共有できる。自分をハッピーにしてあげて、自分発信でどんどん前向きに進んでいけるように。一緒に乗り切れたらなと思います。(聞き手・坂東慎一郎)

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 いはら・りっか 1999年、大阪府生まれ。5歳でバレエを始め、8歳からミュージカルを習い始める。2017年には登美丘高校ダンス部として紅白歌合戦に出演した。高校卒業を機に上京し、18年に俳優デビュー。NHK連続テレビ小説「なつぞら」やTBSドラマ「チア☆ダン」などに出演した。