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  六章 大東亜共栄圏

 

 

 ザーッ……上海の路上に強い雨が叩(たた)きつけている。舗道で猿田博士が目をカッと見開き、仁王立ちしている。店の硝子(ガラス)窓越しに、着飾った日本人たちが談笑しているのが見える。博士がびしょ濡(ぬ)れの新聞を拾い、日付を見ると、昭和十七年(一九四二年)四月――。「三年以上過去に戻った! こ、ここは十六回目の世界! あぁ、火の鳥の話は本当だったんじゃな!」と両腕を振りあげて唸(うな)る。店内の女性客がその姿を見て悲鳴をあげる。

「今は、大東亜(太平洋)戦争が始まって四カ月後。まだ日本が快進撃しているころじゃ。だから街に日本人がたくさんおる。わしは上海と新京で研究職を続けておるのか。火の鳥に関わる過去は消えてしまうはずじゃからな」

 博士は、雨の中、同じく街を彷徨(さまよ)う間久部正人と再会する。正人こそ、一つ前の世界で時を巻き戻した張本人だった……。「なぜじゃ!」「ぼくは火の鳥の力を誰にも使わせまいとしていたのに……東京大空襲、原爆投下……耐えられなくなり、発作的に博士の隠れ家に向かい……」と泣き伏す正人に、「若い君に甘えすぎた。わしも正人くんから隠れるべきだった……」と博士は言う。

 十六回目の世界でも、火の鳥の…

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