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 広島の原爆投下後に降った「黒い雨」によって健康被害を受けたにもかかわらず、広島市や広島県に被爆者健康手帳の申請を拒否されたのは違法だとして、手帳の交付を求めた訴訟の判決が29日、広島地裁であった。高島義行裁判長は原告の訴えを認め、原告84人全員に手帳の交付を命じた。黒い雨をめぐる司法判断は初めて。

 国は激しく降ったとされる大雨地域に限り、援護の対象としてきた。それ以外の地域の人に手帳の交付を認めた今回の司法判断は、戦後75年の節目に、国の援護行政のあり方を厳しく問うものといえる。

 原告(遺族9人を含む)はいずれも原爆投下時、援護の対象とはならない「小雨地域」や降雨地域の外にいたとされる人たち。

 被爆者援護法で「被爆者」と認められれば、手帳が交付され、医療費の自己負担分が無料となり各種手当も受けられる。

 国は大雨地域の人を「被爆者」とは直接には認めず、通達によって、その後の健康診断でがんなどの特定疾病がみつかれば、手帳を交付するという「切り替え」と呼ばれる政策で救済してきた。

 判決は、こうした通達を根拠とする国の援護行政の枠組みに対し「法律による行政の原理の下では、許されるはずはない」と厳しく指摘。国側が、暫定的な措置として「裁量の範囲」とした反論を退けた。

 黒い雨が降った範囲について、判決は、国が大雨・小雨地域の根拠とした1945年の気象台の調査に対し「黒い雨が降ったであろう推論の根拠」という評価をし、他方、国の範囲の何倍も広かったとする原告の主張した専門家の意見を「関係資料と整合性もあり有力な資料」と位置づけ、黒い雨の実際の降雨範囲は国の大雨・小雨地域よりも広いと断定した。

 そのうえで、原告らが援護法で「被爆者」とされる類型の一つ「放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」(3号被爆者)といえるかどうかを個別に検討。原告一人一人に対し、農作業中や屋外にいた際に黒い雨を浴びたなどとした上で、がんなどの援護対象となる特定疾病を発症していることから、84人の原告全員を援護法上の「被爆者」と認め、手帳の交付を命じた。(比嘉展玖)