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 那覇市が儒教の祖・孔子を祭る「孔子廟(びょう)」の敷地を無償提供しているのは政教分離を定めた憲法に違反するかが争われた住民訴訟があり、最高裁第三小法廷(戸倉三郎裁判長)は29日、審理を大法廷(裁判長・大谷直人長官)に回付した。長官と判事全員の15人による審理となり、憲法判断が示される見込み。

 問題となっているのは、一般社団法人「久米崇聖(くめそうせい)会」が市の許可を得て、2013年4月までに松山公園内の一角に建てた「久米至聖廟(しせいびょう)」。約1335平方メートルの敷地内に中国の思想家・孔子を祭る大成殿や戦前の公立学校など複数の施設がある。「体験学習施設」として届け出を受け、当時の故・翁長雄志(おながたけし)市長が条例に基づき月約47万円の使用料を全額免除した。

 中国に反発する市民運動家の女性が14~15年、「違法な支出だ」として使用料徴収などを求めて提訴。二審・福岡高裁那覇支部が差し戻した後、政教分離が正面から争われていた。

 市側は「施設にも社団法人にも宗教性がない」と反論したが、差し戻し後の18年4月の那覇地裁判決は、孔子の霊を迎える祭礼を営んでいることや参拝者が訪れている点などから宗教性を認定。「無償提供は憲法が禁じる宗教団体への特権付与にあたる」として、使用料を徴収しないことは違法と判断した。

 19年4月の福岡高裁那覇支部判決も違憲と認めつつ、使用料の徴収額を示さなかったため、女性と市の双方が上告していた。(阿部峻介)

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 《政教分離の原則》 公権力を持つ国や自治体は宗教に干渉してはならず、宗教的中立性を保たなければならないという原則。戦前、国家神道に特権的な地位が与えられて軍国主義に進んだ反省から、憲法20条と89条で定められている。国などが宗教団体に特権を与えたり、宗教的活動をしたりすることや、公の財産を宗教団体のために使うことを禁じている。最高裁大法廷はこれまでに①愛媛県が靖国神社や護国神社に玉串料などを払った「愛媛玉串料訴訟」(1997年判決)②北海道砂川市が神社に市有地を無償提供した「空知太(そらちぶと)神社訴訟」(2010年判決)の2件で違憲判断を示している。