【動画】毒ガス工場の戦争遺跡が残る大久野島=矢木隆晴撮影
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 瀬戸内海に浮かぶ広島県竹原市の大久野島は、野生のウサギとふれ合えることで人気の島だ。ひとたび島に上がれば、ウサギが次から次に駆け寄ってくる。SNSで話題となり、昨年は年間約27万人が訪れた。

 しかし、この島はかつて地図から消されていた。1929年から44年まで毒ガスが作られていたためだ。周囲約4キロの島には、大小様々な戦跡が30カ所以上残っている。

 島で平和学習のガイドをする山内正之さん(75)によると、島の北西部に残る長浦毒ガス貯蔵庫跡は、41年に山をくりぬいて造られた。庫内は六つの部屋に分かれており、100トン近くの貯蔵缶が6基置かれていた。島で最も大きな貯蔵庫だった。山内さんは「ここから毒ガスが戦場に運ばれ、多くの人の命が奪われたんです」。

 市によると、「ウサギ効果」により、10年間で観光客数は倍以上になった。山内さんは「ウサギを前面に出すことは島の歴史を消すことになる」と懸念しつつも、「(毒ガス製造などの)歴史を学ぶきっかけになれば。悲惨な歴史を繰り返さないように、遺跡から学んでいこうという気持ちを一人一人が持つことが大事だ」と話す。

 島を管轄する環境省は、戦跡の説明版を設けるなど、島の歴史を訪れた人たちに知ってもらえるような整備は続ける方針という。(白井伸洋)

空から見た戦跡
2020年は戦後75年。今も全国各地に残る戦跡をドローンで撮影し、随時配信しています。第1回の鶉野(うずらの)飛行場跡はこちらから