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 2020年度夏季高校野球長野県大会は30日、しんきん諏訪湖スタジアムで3回戦2試合があった。諏訪清陵は延長十一回の末、阿智にサヨナラ勝ち。昨夏準優勝の伊那弥生ケ丘は岡谷南を最後まで打ち崩せなかった。勝った2チームはベスト16に進出した。

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 延長十一回、力尽きた。大歓声の相手ベンチ。阿智のエース北沢翔天(しょうま、3年)は、マウンドでぼうぜん。三塁走者は生還し、すでに決着はついたのに、打球が飛んだ右翼の方向を見つめ続けた。外野手が戻ってくると、「あ、終わったんだ」。小さく笑った。

 調子は悪くなかった。しかし初回、いちばん自信のある直球を外角低めギリギリにピタッと投げ込んだと思ったが、判定はボール。先頭打者にいきなりの四球を出し、そのあともストライクを取ってもらえない。顔をしかめ、グラブを太ももにたたきつけた。

 良くも悪くも、感情を前面に出す。昨秋、試合に負けるとベンチで怒りを隠さず、失策をした後輩を冷たく突き放して一切声をかけなかった。エースで主将で4番。誰よりも勝ちたいという思いが強かった。

 24日の初戦、チームは1年半ぶりの公式戦1勝を挙げた。北沢がうれしかったのは、みんなが守備で強い打球を難なくキャッチしてくれたこと。「一人で野球をやっているんじゃない」と気づいた。自分の態度がチームのムードを悪くしていた、とも。

 この日、13個もの四球を出しながら、七回まで無失点と粘った。ベンチに目をやって、うしろを振り向き、アウトカウントを叫んだ。2年生捕手には、「ここ引き締めていくぞ」と自分から声をかけた。「このメンバーで野球するのは最後かもしれない。一回一回を大切にしたかった」

 しかし延長十一回、すでに握力は残っていなかった。投じた181球目、犠飛を右翼に運ばれた。

 試合が終わると、悔し涙を流しながらも、後輩たちのことを笑って話した。練習の準備もしなかった2年生が、今はいちばんバットを振っていること。冬のきつい走り込みを一緒にやったこと。伝令に指名した、ムードメーカーの1年生のこと。

 「今年のチームはなかなかよかった。毎日楽しく野球ができました」(田中奏子)