聞き手・大部俊哉
11月の米大統領選に向けた民主、共和両党の全国大会が終わり、ジョー・バイデン前副大統領(民主)とドナルド・トランプ大統領(共和)による選挙戦が本格化します。両党大会を、久保文明・東京大学教授(アメリカ政治)に総括してもらいました。
拡大する久保文明・東京大教授(左)=2020年2月7日、米ニューハンプシャー州マンチェスター
バイデン氏は当選すれば就任時に78歳で、史上最高齢の大統領となります。トランプ氏はこれまで盛んに「スリーピー・ジョー(眠たいジョー)」という言葉を使い、「活力がない」と批判してきました。しかし、バイデン氏の指名受諾演説は力強く、そうした事前のイメージを覆しました。これまでの彼の演説の中で、最もよかった部類に入るといえるでしょう。演説をみて、トランプ陣営も「スリーピー・ジョー」というレッテル貼りだけでは勝ちきれないという危機感を持ったのではないでしょうか。
拡大する8月20日、民主党の大統領候補としての指名受諾演説をデラウェア州ウィルミントンから行うバイデン氏=AP
バイデン氏の演説内容も、トランプ氏による分断をあおる統治スタイルを批判しつつ、「もう一度アメリカを団結させよう」というオバマ前大統領に似たレトリックで大きな目標を表現しました。最終的には、「米国はこんなに悪い国じゃない。もっと前向きな国なのに、トランプ大統領のもとで違う国になってしまっている。これは米国の魂を取り戻すための戦いだ」という趣旨の話にもっていき、今回の選挙は単に特定の政策への賛否のための選挙ではなく、米国自体のあり方をめぐる選挙なんだと印象づけました。
政策面では減税や社会保障などに一通り触れ、外交政策も対中貿易に軽く触れていましたが、それほど深く踏み込みませんでした。一方で、新型コロナウイルス対策と人種差別問題については比較的時間を割き、大きな目標と具体的な手順を示していました。政策では、この点で勝負するということかと思います。
民主党の副大統領候補となったハリス上院議員はバイデン氏以上に、演説を聞くのが初めてという人が多かったと思います。まずは自分を紹介するのが演説の大事な目的だったでしょう。黒人の父、インド人の母を持つハリス氏は多様性がいかに米国にとって大切であるかを知っている、とアピールすると同時に、黒人の急進派というイメージで見られないよう、特権階級の出身でもなく、苦しい生活の中で頑張ってきた「普通の米国人」の一人だということも強調しました。翻ってトランプ氏がいかに惨憺(さんたん)たる結果を招いたかということを批判し、バイデン氏を持ち上げるという、期待された役割をうまく果たしたのではないでしょうか。
拡大する民主党全国大会最終日の8月20日、米デラウェア州ウィルミントンで花火を背景に腕を掲げる、大統領候補のバイデン氏(左から2人目)と、副大統領候補のハリス氏=AP
一方、トランプ氏の演説は無党…
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朝日新聞国際報道部