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 台湾の民主化を推し進めた元総統、李登輝(リートンホイ)氏が亡くなった。李氏が台湾にもたらした民主主義と、「自分は中国人ではなく台湾人である」という意識は、後戻りすることのない深さまで根を張っている。その遺産は、激しさを増す米中対立や世界情勢にも影響を与えている。

 李登輝氏はいかに台湾の独自路線を導いたのか。記事の後半では台湾現代史に詳しい若林正丈・早大名誉教授が、李氏が持ち合わせた政治家としてのある能力について解説します。

 李氏の病状悪化が伝えられた29日、蔡英文(ツァイインウェン)総統は、李氏が入院する台北市内の病院に急きょ見舞いに訪れた。かつて大学教授だった蔡氏を、政治の世界で重用したのは総統時代の李氏だ。ふたりは台湾で「政界の父娘」と呼ばれている。

拡大する写真・図版2017年9月9日、台北市内で開かれたパーティーに出席した李登輝氏=西本秀撮影

 「(有権者が)1票で国家のリーダーを選ぶ総統選は、台湾の民主政治の重要な一里塚だった」

 李氏が導入した総統直接選挙から20周年だった2016年、台湾の民主化の歴史を振り返るイベントに蔡氏は総統として参加し、同席した李氏をたたえた。

 引退後、李氏の台湾政界での影響力は限られていたが、台湾の人々が自ら選んだ最初の総統の存在感は大きく、総統選の度に、李氏がだれを支持するのか注目された。

拡大する写真・図版初の総統直接選挙で当選を決め、笑顔で支持者にこたえる李登輝氏(中央)=1996年3月23日、台北

 96年以来、台湾では国民党と民進党の2大政党の間で3回の政権交代を実現。人々は一人一票の民主選挙を誇りとしてきた。97年に中国に返還された香港で、約束されたはずの選挙制度の民主化が進まず、その不満が今日の政治混乱につながったのとは対照的だ。

受け継がれる「父娘」の政治姿勢

 14年に若者が立法院を占拠した「ひまわり学生運動」は、民主化時代に育った世代が担った。若者たちは、政治活動や言論の自由が保障された台湾社会のあり方を守りたいと思っている。自らを台湾人と見なす「台湾人意識」は、総統選を経るごとに強まっており、今年6月の調査では歴代最高の67・0%を記録し、96年の24・1%から2・7倍になった。一方、自らを中国人と見なす割合は2・4%しかいない。

 李氏が残した民主主義と台湾人…

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