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 目指すのは「第二のシリコンバレー」だ――。オーストラリアの最大都市シドニーが最近、こんな宣言を出した。豪州に世界有数の起業ハブ(中核)をつくるとの狙いは一見、意外なようでもあるが、実はこの国には世界的な発明を生んできた「伝統」もある。その可能性を探った。(シドニー=小暮哲夫)

 「シドニーはシリコンバレーに匹敵する巨大な空間になる。豪州と世界の最も優秀な人材が働く場所だ」

 豪ニューサウスウェールズ州(州都・シドニー)のベレジクリアン州首相が記者会見でこう切り出したのは6月25日。シドニーの中央駅を起点に、鉄道沿いの数キロにわたって「テック・セントラル」という先端産業の集積地区をつくると発表した。人件費が高く、「低コスト、大量生産」の製造業が厳しい豪州で、付加価値の高い産業の育成を狙う取り組みの一つだ。

拡大する写真・図版シドニーの中央駅前に建設される豪企業アトラシアンの本社ビルの完成予想図。木材を使った独特のデザインで、「テック・セントラル」のシンボルとなる=豪ニューサウスウェールズ州提供

 2025年までに計25万平方メートルの事務所スペースのうち、5万平方メートルを新興企業向けにあて、2万5千人の雇用を創出する構想だ。周囲にはシドニー大などの研究機関もあり、起業のアイデアや人材の呼び込みにつながると期待する。州は賃料支援などで4800万豪ドル(約37億円)を出資するという。

「人々が交流、起業する場所に」

 豪州の新興企業の代表格であるアトラシアンは、その中核として40階建ての本社ビルを駅前に建設する。

 地元ニューサウスウェールズ大の学生だったスコット・ファークワー氏ら2人が02年に創業。「カンバン(看板)」と名付けた機能で社員の仕事ぶりを「見える化」する企業向けソフト「Jira」などを開発して急成長し、15年に米国の新興株式市場ナスダックに上場した。顧客はアマゾンやトヨタ自動車といったグローバル企業など世界の17万社に増え、20年度の売上高は16億1417万ドル(約1700億円)になった。

拡大する写真・図版シドニーの中央駅前に建設される豪企業アトラシアンの本社ビルの完成予想図(中央)。「テック・セントラル」のシンボルとなる=豪ニューサウスウェールズ州提供

 本社ビルは木材をふんだんに使った独特の設計。従業員4千人が働くだけでなく、新興企業を入居させることも考えており、ファークワー氏は「人々が交流して思わぬ発見をし、起業する場所になる。世界から人を引きつけると思う」と話した。

拡大する写真・図版「テック・セントラル」の建設予定地で記者会見する豪ニューサウスウェールズ州のベレジクリアン州首相(右)と豪新興企業アトラシアンの創業者スコット・ファークワー氏=6月25日、シドニー、小暮哲夫撮影

 ただ、豪州といえば、もともと農業や鉱業が盛んな国だ。シドニーの「実力」はいかほどか。

 米国の調査会社スタートアップ…

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