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 今年4月、昌平(埼玉県杉戸町)の部員50人が、あこがれの舞台「甲子園」まで疾走した。高校からその目的地までの距離は、およそ540キロ。「めちゃくちゃきつかったですよ」。千田泰智(たいち)主将(3年)はこう笑いながら振り返る。

 実はこの「甲子園行き」は、オンライン上での話。スポーツメーカーが配信するアプリのGPS機能を使って、実際に走った距離や速さを測定し、それをバーチャル空間に重ね合わせたものだ。

 5人一組のチーム対抗レースとして実施。スマートフォンを携帯し、家の近所を走ったり、休校のため寮も閉鎖されて関西の実家に帰った際、実際に阪神甲子園球場までランニングしたりした選手もいた。

 単純計算すると、1人平均100キロ余りを走った。1カ月ほどで全チームが「完走」する計画だったが、予定より短い20日程度でたどりついた。千田主将は「一人じゃ無理だった。やって良かった」と話す。先輩後輩、関係なく振り分けられたチームで、互いに刺激し合い、ゴールした達成感を味わった。6月に練習が再開しても、体力面での心配もなかった。

 「野球は団体競技。個人ではなく、チームで乗り切ることが大事。どのように取り組むかをみんなで考えるのが大切だ」。この練習の狙いについて、黒坂洋介監督はこう話す。選手の自主性とチームワークを高めようという試みだった。

 この夏、独自大会に勝ち上がっても甲子園の土を踏めるわけではない。ただ、甲子園を目指す心意気に何ら変わりはない。バーチャル上の練習だったが、むしろ、その思いは強くなった。頂点に向かう気持ちを前面に、集大成となる舞台に向かう。(宮脇稜平)