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 熊本県南部を中心とした豪雨災害から4日、1カ月を迎えた。65人が亡くなった熊本県ではこの日朝、氾濫(はんらん)した球磨(くま)川沿いのまちに追悼のサイレンが響いた。被災者は片付けの手を止め、あの時、あの人を思って手を合わせた。

 熊本県芦北町伏木氏(ふしき)では4日午前6時ごろ、土砂崩れの犠牲になった矢野まさ子さん(67)の自宅跡に地域住民7人が集まり、遺体が見つかった場所に花を供えて手を合わせた。

拡大する写真・図版九州各地を襲った豪雨から1カ月の朝、土砂崩れで亡くなった矢野まさ子さんの自宅跡に地域の住民が集まって手を合わせた。住宅を押しつぶした土砂はうずたかく積み上がったままで、傾いた電柱から電線が垂れ下がっていた=2020年8月4日午前6時15分、熊本県芦北町、加藤諒撮影

 矢野さんの幼なじみで、区長を務める中山幹男さん(75)は「朗らかで、みんなをぱっと笑わせる人だった」と、その人柄をしのんだ。被災した日も、矢野さん夫婦と言葉を交わしていた。土砂崩れに巻き込まれたのはその直後。「笑って手ば振っていた姿を思い出す。ほんの一瞬でこんなことになってしまうなんて」と声を詰まらせた。

 人吉市では午前9時にサイレンが鳴り、市民らが黙禱(もくとう)した。同市では球磨川が氾濫(はんらん)して20人が死亡し、県内最多の約4700棟が浸水した。この日の災害対策本部会議で、松岡隼人市長は「私たちそれぞれが大切なものを失った。一日も早くごみや土砂をなくし、被災者の住まいの確保を進める」と決意を述べた。

拡大する写真・図版九州各地を襲った豪雨から1カ月の朝、土砂崩れで亡くなった矢野まさ子さんの自宅跡に地域の住民が集まって献花した。住宅を押しつぶした土砂はうずたかく積み上がったままで、傾いた電柱から電線が垂れ下がっていた=2020年8月4日午前6時31分、熊本県芦北町、加藤諒撮影

 人吉市に隣接する球磨村でも午前9時にサイレンが鳴り響いた。村役場に近い一勝地地区では、被災した家を片付けていた住民らが作業の手を止め、両手を合わせて1分間黙禱した。

拡大する写真・図版九州各地を襲った豪雨から1カ月の朝、土砂崩れで亡くなった矢野まさ子さんの自宅跡には地域の住民が集まって手を合わせた=2020年8月4日午前6時23分、熊本県芦北町、加藤諒撮影

 佐々木信子さん(68)は、家ごと流されて亡くなった愛甲泰治(やすはる)さん(81)の家族3人に思いをはせた。一家は商店を営んでいた。「プロパンガスを運んでもらったりして、お世話になった。みな気さくないい人だった」としのんだ。

 佐々木さん宅は1階が浸水。避難所から通って片付けを続けている。「元の暮らしに戻るのに何年かかるか。1カ月経ってもまだ先が見えません」と話した。(藤牧幸一、伊藤秀樹、山崎毅朗)

「親より先にいなくなるとは」

拡大する写真・図版亡くなった湯本秀子さんが可愛がっていたネコたち。まだ水害の跡が残る家で暮らしている=2020年8月4日午前8時2分、熊本県人吉市、吉本美奈子撮影

 4日午前9時、熊本県人吉市内に犠牲者を悼むサイレンが流れた。浸水の跡が屋根まで残る球磨(くま)川沿いの家屋では、数匹の猫が丸くなっていた。この家に住んでいた湯本秀子さん(61)が可愛がっていた猫だ。

拡大する写真・図版湯本秀子さん

 「すぐに帰ってくるけん」。県内に大雨特別警報が発表されてまもない7月4日午前5時半ごろ、両親を避難所に送り届けた湯本さんは、そう言って自宅へ引き返した。家に残してきた猫を心配していた。母親の美代子さん(81)はそのとき、「すぐ帰ってくるだろう」と思った。

 湯本さんは3姉妹の長女。大阪…

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