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 国内の新車販売市場は、SUV(スポーツ用多目的車)にあらずんばクルマにあらず、と言わんばかりのSUV熱の真っただ中。新車販売の4割近くを占める軽自動車も例外ではない。ダイハツ工業がこのカテゴリーに満を持して投入した「タフト」に試乗して、その魅力を探った。

ハスラーよりもワイルド

 タフトは、ダイハツが今年6月に発売した軽SUV。量販スーパーハイトワゴン「タント」と共通の車台で仕立てたクロスオーバーモデルだ。

 ライバルに想定するのは、スズキが2014年から販売する軽SUV「ハスラー」。スペース効率に優れた背高ワゴン一辺倒だった軽市場において、過不足ないサイズ感にハードすぎないワイルド感を加味した無二のコンセプトが受け、他メーカーを販売台数で大きくリードする。

 今年1月に全面改良された2代目ハスラーと同様、タフトのスタイリングも最近のトレンドである直線基調。無塗装樹脂のフェンダーに大ぶりな15インチホイール、直立気味のフロントガラスにグリルレスの絶壁フロントマスク、ボディー同色の太いBピラーと、武骨さをハスラー以上に強く打ち出す。

 その造形コンセプトには、スズキ「ジムニー」や米ハマ―「H3」といった本格クロカンとの類似を指摘する声が多いが、むしろ経営危機前の日産自動車の佳作「ラシーン」に近いと感じた。最低地上高を大きく取りながら全高は抑えめで、どこか愛らしいキャラクターも似ている。

 このワイルドないでたちには、無味乾燥な鉄チンのホイールが意外と似合う。中でも、白塗りのスチールホイールを履く外装オプション「ホワイトパック」を選択すると、いっそう道具感が強調される。かわいらしさと武骨さのバランスが絶妙で、男女問わずオススメだ。

軽快で自然な乗り味

 スクエアなスタイリングと、ダッシュボードのかなり前方にそそり立つフロントガラスの恩恵で、室内は広々。ただ、ワイルド感を強調する幅広のセンタークラスターが運転手の左足にぶつかってしまい、足元に窮屈さを感じるのは残念だ。

 いかつく見える車体ながら車重は800キロ台とさほど重くないため、乗り味は軽快。加減速はスムーズでギクシャク感はなく、重厚感すら漂う。車高が高すぎないのが効いて、コーナリング中に軽ハイトワゴンのような揺さぶられ感はない。やや締まった足回りと相まって、「ミライース」のような低重心のハッチバック型に近い自然なフィールだ。

 ただし、ターボの付かない廉価モデルは非力さが否めず、アクセルを踏み込んで息苦しい回転音を響かせても満足な加速感は得られない。速度域を問わず、ストレスなく乗れるのはターボ付きに限る。

 おおむね好印象な乗り味は、タフトで3車種目となるダイハツの新たな共通プラットフォーム「DNGA」の高い剛性によるもの。ただ、車体のガッチリ感が際立つためか、標準で履くエコ銘柄タイヤの頼りなさが気になった。オーナーには履き替え時期に、車両性能に見合ったより高性能なタイヤを勧めたい。

 ダイハツとしては初採用となる電動パーキングブレーキも便利。シフトレバーのPレンジに連動してかかり、Dレンジでアクセルを踏み込むと自動解除される優れもの。衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)もそうだったが、ダイハツは上級車種のトレンドを早くそつなく採り入れる。100万円台の軽に低コストで先進技術を普及させる開発力はさすがだ。

全面ガラス張りの開放感

 そして、このクルマの白眉(はくび)はなんといっても、全車に標準で備わる「スカイフィールトップ」だろう。天井の前半分が、はめ殺しの全面ガラス張りになっている。その開放感は、バブル期のトヨタ自動車の珍車「セラ」に匹敵する。夏に開けっ放しだと車内がじわじわと暑くなったり、こまめに洗車しないと汚れが目立ったりと不都合はあるが、それを差し引いても十分に魅力的だ。

 後席を倒すとフルフラットになって水洗いもできる広い荷室と、オープンエアに似た前席の開放感――。こうした陽気な仕立てが、日々の通勤や家族の送迎といった普段使いの道中にあっても、海や山でのアウトドアに繰り出す楽しげな空想を抱かせてくれる。

 思えば、かつて身近にあったはずのそんなワクワク感を忘れかけて久しい。消費マインドが冷え込む今、あえてタフトを投入した理由をダイハツの奥平総一郎社長はこう語る。「お客様にとって少しでも気分を軽く、明るくしてくれる存在になれれば」

 実用一辺倒の軽ハイトワゴンと違って「不要不急」な存在ながら、淡いワクワク感で日常に彩りをもたらす軽SUV。コロナ禍で鬱々(うつうつ)とする2020年夏に駆る一台としては、なかなかに良い選択ではないだろうか。(北林慎也)