患者縛らない「看護革命」 現役半世紀、71歳の看護師
生井久美子
人を縛る。自由を奪う。
ふつうなら許されない異常なことが、認知症のお年寄りに対しては「安全のため」などの理由で、医療や介護の現場では長く、あたりまえのように続けられてきた。
看護師の田中とも江さん(71)は日本でいち早く、「縛らない看護」の旗を掲げた人だ。1986年から現場で工夫を重ね、改革の先頭に立ってきた。私が初めて会ったのは26年前。「縛ったら病院は牢獄になります!」と訴え、「できっこない」と医療関係者に変人扱いされてもへこたれなかった。同世代が引退するなか、今も施設長を勤め、全国の現場や大学で講演を続ける。
なぜ、今も? 力の源は何?
「理不尽な有り様を見てしまったから。見て見ぬふりは、加害者と同罪です。今もひどい目にあっている人がいる。発信し続けないと許されない」。田中さんは若き日の「卑怯(ひきょう)な自分」を、忘れない。

戦後の看護を体現する人だ…