【ノーカット動画】国際平和シンポジウム2020「核兵器廃絶への道」
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 国際平和シンポジウム「核兵器廃絶への道~世界の危機に、歩みを止めない~」が1日、長崎市の長崎原爆資料館ホールで開かれた。地球滅亡までの時間を示す「終末時計」が残り100秒と過去最悪の状況を示し、新型コロナウイルス感染拡大にも脅かされる中、高まる核危機を乗り越える手がかりを探った。ウィリアム・ペリー元米国防長官ら米国の2氏はオンラインで参加。ミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領は動画でメッセージを寄せた。

拡大する写真・図版米国からオンラインで参加したペリー氏(右から2人目)らを交えて開かれた国際平和シンポジウム=2020年8月1日、長崎市、吉本美奈子撮影

地球滅亡、防ぐには核廃絶しかない ウィリアム・ペリー元米国防長官(92)

 地球滅亡まで、あと100秒!

 米科学者らは1947年から毎年、核による大惨事が起きる可能性を予測し、「終末時計」の時刻に反映してきた。今年は史上最悪の100秒前に設定された。冷戦期の暗黒時代と同じくらい、核の大惨事が起こりそうだという。

 しかし、大半の人はこれを理解していない。核戦争の危機は冷戦の終結とともに終わったと思っている。

 (米国による)広島・長崎での原爆使用以降は、核兵器を実戦使用した国はない。抑止が効いているように見える。なぜ「終末時計」の時刻を設定する科学者たちはそれほど危機が大きいと考えているのだろうか。危険を低減するために私たちは何ができるのか?

 冷戦期、米国は、ソ連が核による奇襲攻撃で米国を無力化しようとしていると信じていた。ソ連も、米国が奇襲攻撃をしようとしていると信じていた。こうして軍拡競争が展開され、双方が3万発以上の核兵器を持つに至った。米ソは生き残りのために、それが必要だと信じていた。

 ソ連が崩壊し、90年代に米国とロシアは核兵器の解体を始めた。私はロシア側と緊密に、まるで同盟国のように働いた。私が国防長官だった3年間に約8千発の核兵器が解体された。この親善と協力の間も、米国は既存の核政策を放棄せず、米国にとっての脅威はロシアからの奇襲核攻撃であると信じた。

 直近の10年間、敵対心は高まり、米ロは「第2の冷戦」とも呼ばれる状況に陥っている。冷戦期のように、米国は核兵器を高度警戒態勢に置き、ロシアから攻撃があったとの警報を受ければ、数分のうちに核兵器を発射できる。ロシアも同様の態勢にある。

 問題は、誤警報によって偶発的に核戦争が始まってしまうことだ。発射後、それは誤警報だったと判明しても、核搭載の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を呼び戻したり自爆させたりはできない。

 (70年代、カーター政権の冷戦期に)私が国防次官の時も誤警報があり、ソ連から米国に200発のミサイルが飛来していると、夜中にたたき起こされたことがある。コンピューターの誤作動や人的ミスは今後もありうる。

 政治的な誤解で、核戦争が始まる危険もある。62年のキューバ危機でケネディ(米大統領)とフルシチョフ(ソ連共産党第1書記)は、誤った情報に基づいて行動しがちだった。もしケネディが軍の勧告通りにキューバに対する軍事行動を命じていたら、ソ連との本格的な核戦争につながっていただろう。

 文明の存続を、幸運に委ね続けるべきではない。

 今日、核戦争が起きれば数百の都市と数千万人の命が失われ、世界規模の環境破壊と文明の終わりにつながるだろう。恐竜は自然災害で絶滅したが、人類は自らの力によって滅びる。核兵器は人類にとって根源的な脅威となっており、解決には核兵器を廃絶するしかない。

 80年代半ば(85年ジュネーブ、86年レイキャビクで)、米ソ首脳のレーガン・ゴルバチョフ両氏が会談し、すべての核兵器を放棄することまで議論した。米国が進めた弾道ミサイル防衛の扱いをめぐって一致できず、核廃絶には至らなかったが、少なくとも三つの成果をもたらした。(87年署名の)中距離核戦力(INF)全廃条約と、「核戦争に勝者はなく、決してその戦いはしてはならない」という名言(85年ジュネーブでの米ソ共同声明)、そして最も重要なのは、核兵器廃絶が実現可能だと考えられるようにしたことだった。

 2007年に私はジョージ・シュルツ元国務長官らとともに米ウォールストリート・ジャーナル紙に「核兵器なき世界」の共同論文を寄せた。09年に就任したオバマ大統領もプラハ演説で「核兵器なき世界」を訴えるなど核兵器廃絶に向けて前向きな数年間があったが、長くは続かなかった。

 10年に米ロ首脳が署名した配備核兵器を各1550発まで削減する新戦略兵器削減条約(新START)は米国で政争の具になってしまい、オバマ大統領は連邦議会に条約を批准してもらうために1兆ドル以上もかかる核兵器近代化という代償を払うことになった。

 私は諦めるつもりはない。若者を中心とする教育プロジェクトを立ち上げ、出版や講演、ドキュメンタリーなどを通じて、核の危険性を訴え続けている。次期大統領や議会にも働きかけるつもりだ。

 地球滅亡まで、あと100秒!

 「終末時計」の針を戻そう。孫たちが核の大惨事を恐れずに暮らせるよう、私は全力を尽くす。

拡大する写真・図版オンライン会議システムを使ってパネル討論に参加するウィリアム・ペリー元国防長官

 ウィリアム・ペリー元米国防長官 クリントン政権で国防長官を務めた。「核兵器なき世界」を提唱したオバマ前大統領の政策に影響を与えた「四賢人」の一人。

核リスク低減のための10の提言

①米大統領の核兵器発射の専権を終わらせ、「フットボール」(核の発射装置を備えたブリーフケース)を退役させよ

②警報即発射を禁止せよ

③先制使用を禁止せよ

④すべてのICBMを退役させ、核兵器の再構築(近代化計画)を縮小せよ

⑤新STARTを延長し、さらに踏み込め

⑥戦略ミサイル防衛を制限せよ

⑦条約を待つな

⑧北朝鮮、イランを外交的に引き込め

⑨市民運動のテーマに核兵器を取り込め

⑩明確な態度を持った大統領を選べ

=ペリー氏らの新著「核のボタン」(朝日新聞出版)から

【特別メッセージ】 

「核戦争に勝者はいない」再確認を ミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領(89)

 長崎は広島と同じ75年前、原爆により数万人もの犠牲者と、障害を負った人々が焦土に残された。今日の新型コロナウイルスは、現代文明を脅威にさらす新たな試練だ。包括的な対策をともに育み、信頼できる国際安全保障づくりのために国際協力を新たなレベルに高める必要がある。核兵器の問題は、その中心でなければならない。

 ペリー氏は昨年、米紙で警告した。「米国もその同盟国もロシアも、危険な政治的マヒに侵されてしまった。ここ74年で初めて核兵器使用へと導く可能性がある」と。冷戦よりも危険な核の脅威が目の前にある。

 私自身、何度も提案してきたが…

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