コロナ禍で劇場から配信へのシフトが加速する映画界で、その逆をゆく新たな動きがある。岩井俊二さんが監督を務め、俳優の斎藤工さん、のんさんらが出演する映画「8日で死んだ怪獣の12日の物語」。通販で買ったカプセル怪獣を育てていくと、思いがけない姿に成長していくという物語だ。コロナ禍で始まったSNSのリレー動画をきっかけにリモートで製作され、ついには映画館へ。7月31日から各地のミニシアターで順次公開され、7日からは「オンライン上映」も始まる。いずれも興行収入のうち、製作側の収入のすべてを劇場に還元する「ミニシアター支援」でもあるという。3人に本作の製作過程や、自分にとって映画とは何かを問いかけた。「自分の小宇宙」という自宅で自らを撮影した斎藤さんは「プライバシーのはざまがない時間を過ごしている」との心境を語り、のんさんは「自粛期間中に新しい映画のオファーをいただけると思っていなかったので、気を抜いてた(笑)」といったエピソードを明かした。一問一答は次のとおり。
――なぜこの作品をつくろうと思ったのか教えてください。
岩井 3カ月前の4月28日に樋口真嗣監督から「カプセル怪獣計画」というリレー型のチャレンジ動画企画に声をかけられたのがきっかけ。本当は30秒ぐらいのミニ動画を撮って送るだけなのに、そこで怪獣の卵を育てるというアイデアが浮かんでしまって。それでシナリオを書いているうちにだんだん膨らんできて、斎藤さんに出演をお願いして、その頃にはもう(粘土で作った)怪獣もある程度出来上がっていた。撮影開始したのが、いつぐらいでしたっけ?
斎藤 4日後、5日後ぐらいにはもう……。
岩井 斎藤さんに撮影してもらっている間に時間があったので、また話が膨らんで。のんちゃんのパートとか武井(壮)さんのパートとか書き足して、最後ユーチューバーの穂志もえかさんのところを書き出した。樋口真嗣監督のパートは台本もなくて、「斎藤さんが樋口監督に怪獣の質問する」という1行ぐらい。ほぼアドリブだった。撮影も1カ月後ぐらいにはほぼ終わっていた。コロコロとボールが転がりながら大きくなっていった。映画はどんなに速くてもスタートから1年はかかるので、こんなあっという間にできたのはかつて経験のない、不思議なこと。緊急事態の中で、今までにない速さで何かが動き、出来上がった感じでした。
――最初から映画にというこ…