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 新型コロナウイルスの患者がいる病院で母親が看護師をしている「わたし」。母親の仕事を知った同級生から「お前、うつっているかもしれない」と言われた後、「病院に行かないで」と頼むと、母親は話し始めた――。自作の教材を使った差別防止の道徳授業が、福岡県古賀市立花鶴(かづる)小であった。児童の手が次々に挙がり、「いつもと違う」と教師たちを驚かせた。

 「医療従事者は、なぜ命の危険や差別にあうかもしれないのに働くのか、考えよう」。教材を作った芝尾大樹教諭(38)が、5年生に語りかけた。

 冒頭、新型コロナの対応に奔走する病院の映像を視聴。教材では、最も重い感染症に対応する第1種感染症指定医療機関に勤める「お母さん」が、運ばれてきた新型コロナの重症患者を看護する様が描かれる。

 学校での出来事を伝え、病院に行かないよう頼んだ「わたし」。お母さんは横に座って話し始めた。新型コロナという「見えない不安から自分を守るために、見える相手を攻撃してしまう」のだろう。自分も「もうやめてしまいたい」と思うこともあった、でも回復した患者から泣きながらお礼を言われ「今もその言葉を励みにしてるの」と。

 「わたし」はお母さんを誇りに思い、できることをやろうと決める。

 芝尾教諭は、「病院に行かないで」と言われたときのお母さんの気持ちを尋ねた。児童は一斉に手を挙げ、「悲しい気持ちでいっぱい」「皆のために頑張っているのにと泣きそうな気持ち」と答えていく。

 続けて「それでも行くのをやめると言わなかったのはなぜ?」と質問。各自が答えを書いたあと、児童同士で話し合い、発表した。「差別の悲しみより、苦しんでいる人を楽にしてあげたい気持ちの方が強かったから」「患者を家族に会わせてあげたいから」「患者にありがとうと言われたことが忘れられないから」

 最後に、学んだこと、これからやりたいことを自由に答えてもらった。母親が看護師で、父親も院内感染対策に関わる仕事をしている青木玲奈さん(11)は「親が病院で働いて毎日大変そうにしているから、家で手伝いたい」と答えた。今まで親から新型コロナにかかわる苦労を聞いたことはなく、教材で初めて知ったことも多かったという。

 普段より積極的に自分の意見を発表したという平川大晴(たいせい)さん(10)は、ニュースで医療従事者の大変さを見聞きしていたといい、「こういう勉強を色んな学校でやれば、差別がなくなってよいと思う」と話した。

 古賀市には、県内で唯一の第1種感染症指定医療機関である福岡東医療センターがあり、光延正次郎校長は「身近なこととして医療従事者への差別のことをわかってほしい」と考えたという。話を持ちかけられた芝尾教諭が、新聞で紹介されていた医療従事者の実態を元に教材を作成した。

 当初は「わたし」の気持ちを考えさせるつもりだったが、より医療従事者への共感を引き出したいと、「お母さん」の気持ちを考える方向に修正した。

 芝尾教諭は「子供たちの目つきが違い、意見も活発だった。自分事として考えてくれていると感じた」と振り返った。授業は5、6年生計237人を対象に、クラスごとに順次実施する。

 この教材を使った道徳授業については後日、他の学校でも使ってもらえるよう校長会で報告されるという。(渕沢貴子)

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